マイナンバー問題は「消えた年金記録」と病巣が同じ!総点検してもムダな理由年金手帳は、基礎年金番号の確認のため「見る」以外に、手帳としての機能を失っていた。では、そもそも年金手帳とはなぜ「手帳」だったのでしょうか?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

マイナンバー関連のトラブルが相次ぐ中、政府は「総点検」をしながら健康保険証とマイナンバーカードの一体化を急いでいる。かつて「消えた年金記録問題」の対応をした筆者は、「政府はナンセンス。今のままでは事態は解決しません」と断言。個人情報に関する構造問題について、年金手帳を例に解き明かす。(トライオン代表 三木雄信)

消えた年金問題もマイナンバー問題も根は同じ

 マイナンバーに関してさまざまなトラブルが発生し、岸田内閣の支持率にも影響が出るほど問題が深刻化しています。政府は「総点検本部」を設置し、地方自治体も巻き込み、省庁を挙げて「総点検」を進めています。

 しかし、前回の記事『「マイナンバー総点検」が残念すぎる理由〈消えた年金〉収拾の専門家が「ナンセンス」とバッサリ』でも書いた通り、今のままでは事態は解決しません。私は、厚生労働省の大臣政策室政策官や日本年金機構理事(非常勤)として、年金記録問題の解決に当たってきた経験から、断言します。

 実は、年金記録問題もマイナンバー問題も、根っこは同じ。原因は、国民の個人情報に関する構造問題(データガバナンスの欠如、詳細は後述)が本質であり、いくら総点検してもその解決には至りません。今回は、この個人情報に関する構造問題について、年金記録を具体例に説明します。

 さて、読者の皆さんの多くは年金手帳をお持ちでしょう。ちなみに、年金手帳は2022年4月に廃止されたので、それ以降に20歳になった人や、紛失した人は、年金手帳の発行はされません。

 だからといってそれで「困った」という話を聞かないと思います。それは年金手帳が、基礎年金番号の確認のため「見る」以外に、手帳としての機能を失っていたからです。では、そもそも年金手帳とはなぜ「手帳」だったのでしょうか?