夢のクラシックホテルに気持ちよくチェックインし、おいしい食事を堪能し、温泉も高級ベッドも堪能した老夫婦と、険悪なままホテルに泊まった老夫婦。2組にある違いとは? Photo:PIXTA
近年、ウェルビーイングという考え方が注目されています。ウェルビーイングとは一般的に「幸福」と訳されますが、将来にわたりウェルビーイングを保つためにはお金は切っても切り離せない関係と言えそうです。そこで今回はファイナンシャルプランナーである山崎俊輔さんの新刊『ファイナンシャル・ウェルビーイング』(青春出版社刊)から幸福度が高まるお金の考え方について抜粋して紹介します。
同じ10万円の旅行
喧嘩をするのか楽しむのか、違いはどこにある
同じ1000円、同じ10000円を使うのなら、気持ちよく使い、そのお金で幸せを感じるべきです。しかしこれが難しい。
例えばこんな話を聞いたらどう思うでしょうか。
ある老夫婦がたまには旅行でもと思い立ち、箱根の強羅花壇あるいは富士屋ホテルのような高級旅館の予約を取りました。
ところがふたり、行きのロマンスカーに乗った段階で「やっぱりこれはムダづかいじゃないのだろうか」「そっちが行きたいと言い出したんだろう」「こんな贅沢をして20年後も大丈夫なのか心配だわ」と言っています。
少し険悪な雰囲気のままチェックインをしたあとも喧嘩は続き、豪華な食事は味もわからず、ふわふわのベッドも落ち着かないまま一夜を過ごします。
翌日に観光でもと繰り出してみたものの、地獄谷をロープウェーから見ていると絶望的な雰囲気となり、つい身を投げてしまおうかと考える始末。
最後は帰りのロマンスカーで「こんなムダづかいをしなければよかった」「言い出したのはそっちだ」と言い争いをしながら家に帰るのです。
もちろんその後数週間も不機嫌な日々が続きます。
ファイナンシャル・ウェルビーイング的に良好な状態にある老夫婦が同じ予算、同じ行程で旅行に出かけるとこうなります。
年に一度の旅行予算は資産管理上問題ないものと把握されています。ですからそもそもお金を使ってもいいのだろうか、という心配や不安はありません。
「久しぶりの箱根は楽しみだ」「夢のクラシックホテル、一度は泊まってみたかったのよ」と行きのロマンスカーでは旅行の楽しみについて語り合っています。
気持ちよくチェックインし、おいしい食事を堪能し、温泉も高級ベッドも堪能します。年金生活者向けの平日プランなので館内ガイドもついていて「ここがチャップリンが泊まった部屋!」なんて喜んでいます。もちろん翌日の観光も笑顔でスタートします。
地獄谷をロープウェーから見下ろしても「絶景だねえ」とカメラを取り出しますし、むしろ「温泉卵買って帰らなくちゃ」とお土産を探す余裕もあります。
「温泉卵を食べて、寿命が伸びちゃったねえ」「次の旅行は来年として、どこに行こうかしら」と笑顔で話しながら、ロマンスカーに乗って帰宅の途につくのです。
二組の老夫婦、「同じ予算」をかけながら、なぜ幸福度が違ってしまったのでしょうか。この問題、一度よく考えてみる価値があると思います。
「使っていい枠」がはっきりすれば
気持ちよくお金を使えるようになる
ファイナンシャル・ウェルビーイングと投資の関係を考えてみるとき、2つの視点で考えてみる必要があります。
二組の老夫婦の違いが生じた最大の理由は、両者にマネープランの差があります。
喧嘩している夫婦はその旅行予算が妥当なものかイメージを持っていません。だから「こんなに使っていいのか」と不安になっています。不安があれば旅行の時間を素直に楽しめません。それでは非日常の体験から生み出す感動も得にくくなり、結果として幸福度を下げています。
帰り道で「行かなければよかった」と喧嘩をしているなら、本当に旅行に行かないほうが喧嘩も不安もなく10万円も消えることがなかったでしょう。
仲良し夫婦のほうはおそらく、「年に一度10万円の旅行予算を設定しても、80歳くらいまで問題なくやりくりできるだろう」というイメージを持っています。冷静に考えれば10万円の旅行を65歳から15回出かけたところで150万円の予算です。月割で考えても8000円ちょっとの予算でしかないわけです。それが「見える化」されているからこそ気持ちよくお金を使えるわけです。
将来お金の尽きる不安というのは、私たちの幸福度に大きく作用しますが、特に年金生活者にとっては切実です。
しかし基本的な生活費が公的年金でやりくりできている家計なら、老後の破たんも心配はありません。公的年金は2カ月に一度、何十年長生きしても振り込み続けてくれるからです(年金額の多いほうが先立った場合は、その一部を遺族年金として遺されたほうに上乗せしてくれる仕組みもある)。
自分の使うお金と、自分の未来に不安がない人は気持ちよくお金を使うことができます。これは幸せを感じるお金の使い方を考える基本です。
「ときどきの出費」「高額の出費」ほど
気持ちよく使わないと損
お金の使い方を言うとき、「ケチ」とか「浪費癖」とかいろんな言われ方があります。でもここで着目されているのは「金額の多寡」のみであって、「満足度」「幸福度」の指標は入っていないように思います。
ファイナンシャル・ウェルビーイングの観点では、「満足度」や「幸福度」を獲得できているかに注目してみましょう。







