翌日に観光でもと繰り出してみたものの、地獄谷をロープウェーから見ていると絶望的な雰囲気となり、つい身を投げてしまおうかと考える始末。

 最後は帰りのロマンスカーで「こんなムダづかいをしなければよかった」「言い出したのはそっちだ」と言い争いをしながら家に帰るのです。

 もちろんその後数週間も不機嫌な日々が続きます。

 ファイナンシャル・ウェルビーイング的に良好な状態にある老夫婦が同じ予算、同じ行程で旅行に出かけるとこうなります。

 年に一度の旅行予算は資産管理上問題ないものと把握されています。ですからそもそもお金を使ってもいいのだろうか、という心配や不安はありません。

「久しぶりの箱根は楽しみだ」「夢のクラシックホテル、一度は泊まってみたかったのよ」と行きのロマンスカーでは旅行の楽しみについて語り合っています。

 気持ちよくチェックインし、おいしい食事を堪能し、温泉も高級ベッドも堪能します。年金生活者向けの平日プランなので館内ガイドもついていて「ここがチャップリンが泊まった部屋!」なんて喜んでいます。もちろん翌日の観光も笑顔でスタートします。

 地獄谷をロープウェーから見下ろしても「絶景だねえ」とカメラを取り出しますし、むしろ「温泉卵買って帰らなくちゃ」とお土産を探す余裕もあります。

「温泉卵を食べて、寿命が伸びちゃったねえ」「次の旅行は来年として、どこに行こうかしら」と笑顔で話しながら、ロマンスカーに乗って帰宅の途につくのです。

 二組の老夫婦、「同じ予算」をかけながら、なぜ幸福度が違ってしまったのでしょうか。この問題、一度よく考えてみる価値があると思います。

「使っていい枠」がはっきりすれば
気持ちよくお金を使えるようになる

 ファイナンシャル・ウェルビーイングと投資の関係を考えてみるとき、2つの視点で考えてみる必要があります。

 二組の老夫婦の違いが生じた最大の理由は、両者にマネープランの差があります。