2023年10月からインボイス制度が始まります。「増税ではないか?」「経理の手間が増え、負担が増大する」など、さまざまな意見が出ています。そのインボイス制度の影響を強く受けるのが「ひとり社長」です。しかし、業種・業態・売上規模によっては、「インボイスに登録しないほうがいい」と提案できるケースもあり、戦略的な選択が求められる制度ともいえるのです。
本連載は、経費精算から決算・申告まで、ひとり社長の経理の基本を学ぶものです。著者は、税理士の井ノ上陽一氏。インボイス制度、電子帳簿保存法に完全対応の『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』の著者でもあります(発売は8月2日)。「ひとり社長なら、経理はこれだけでいい!」とポイントをおさえた1冊になっています。

できる社長が「スマホではやらないこと」とは?Photo: Adobe Stock

できる社長がやっている「仕事の効率化」

 本日は、社長のための「ITを使った経理効率化」の具体例を紹介します。

 環境を整えていきましょう。まずはPCからです。PCは徐々に消耗していき、処理速度が遅くなります。ソフトやネットサービスの進化にともなって要求される性能も上がりますので、余計に処理が重くなるのです。2年に1回程度はPCを買い換えましょう。

「起動に時間がかかる」「ファイルを開くのに時間がかかる」のは時間の無駄です。10万~15万円ほどのお金を出せば、高性能なPCが買えます。仮に、15万円のPCを買ったとしても、2年使えば1日当たりにかかるお金は312円ほどです(毎日8時間、週5日使ったと仮定して計算)。スマホ、タブレットだけでは限界があります。使えるアプリが違うからです。パソコンに投資しましょう。

 デスクトップもいいのですが、ノートパソコンのほうがオススメです。どこでも仕事ができるようにしておくと、いざというときのリスクヘッジにもなり、気分転換にもなり、集中できます。天気のいい日にカフェのテラスでやれば、経理も楽しめるものです。

 ただし、紙の書類は持っていかないようにしましょう。置き忘れる、なくすリスクがあるからです。自宅やオフィスでスキャンして(スマホのカメラで撮って)、そのデータで経理作業をしたり、データ分析したりしましょう。

スマホの基本的な使い方

 スマホは経理をする上で、「紙のスキャン」「スクリーンショットで証拠保管」「支払い」などに使っていきましょう。

 スマホもバッテリーが消耗するので、少なくとも2年で買い換えたいものです。高い機種はカメラの性能が上がりますが、経理にはあまり関係がありません。小さくて軽いものでもかまいません。ただ、後述するように効率化の面ではiPhoneがオススメです。

 レシートをスマホでスキャン(スマホで写真を撮って保存)して会計ソフトに取り込むこともできますが、スキャンの手間、精度を考えると、スキャナーによるスキャンよりは劣ります。ただ、一時的なスキャンならオススメです。

 例えば、経理に関係ない紙の資料であれば、スキャンした後はすぐ捨てることができます。また、経理に関係あるものでもスマホでスキャンしておけば、見返すときはデータを見ればすぐ確認できるようになります。

 経理には支払いも含まれ、効率よく済ませたいものです。スマホでQRコードを使って決済すれば、証拠が残り、経理の効率化にもなりますし、現金を使わなくてすみます。現金を使わなければ、ATMや銀行の窓口で並ぶ必要もありません。

 続いて、「スマホではやらないほうがいいこと」をご紹介します。