後輩がミスしてばかりで、ついイライラしてしまう。どんな伝え方をすればいいのか、わからない……。
そんな職場のストレスを感じている人にぜひ読んでもらいたいのが、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。優秀なビジネスパーソンに共通する思考アルゴリズムが、見事に解説されている。
著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏。ベストセラーとなっている本書は、多くの経営者やビジネスパーソンから評判の一冊だ。
そこで、本書からより深い学びを得ようと、職場の「あるある」なお悩みを、木下氏に相談させてもらうことにした。「仕事が遅くて困っている」から「部下が動いてくれない」という悩みまで、その場しのぎの対策だけでなく、根本的な問題解決策を教えてもらおう。
連載3回目は、「ミスが多すぎる人の対処法」だ。(構成・川代紗生)
「やる気のレベル」にはズレがある
──経験が増えてくると、後輩につきっきりで仕事を教えなくてはならない場面も増えますよね。でも、やる気がないのか、後輩がケアレスミスを連発してばかり。どんな伝え方をすればいいかわからない。そういうときって、どうしたらいいでしょうか?
木下勝寿(以下、木下):私は基本的に、「全員やる気はある」という前提で人と接するようにしています。
当社でも何百人もの従業員が働いてくれていますが、他人から見るとやる気がないように見えても、本人と面談をすると実は精一杯がんばっているつもりだった……ということはよくあります。
やる気がないのではなく、基準が人とはズレているのだと思います。
その人はベストを尽くしているつもりでも、まわりの人からすると、その「ベスト」はレベルが低く見えるのです。
このように、「やる気のレベル」にはズレがあり、人それぞれ違います。
この前提がある限り、「やる気をどうにかして上げてもらう」方法を考えるより、「やる気の有無に限らず成果が出る仕組みやコツ」を考えるほうが得策だと思います。
後輩のミスを減らす「伝え方」のコツ
──後輩の頻発ミスを減らすためには、どんなコミュニケーションを心がけたらいいでしょうか?
木下:部下や同僚をいい方向に導くちょっとしたコツとして、「肯定的イメージコントロールの法則」があります。『時間最短化、成果最大化の法則』でも紹介したものです。
人間の体は、思っている以上にイメージしたことに反応するもの。
たとえば小学生の頃、私は6段の跳び箱がどうしても飛べませんでした。
ふと、跳べないのは「跳べない自分」をイメージしているからではないかと思いつき、今度は、「6段を跳べた自分」を思い浮かべてから助走すると、ポンときれいに跳べたのです。
ある高校野球の監督は「変化球に手を出すな」ではなく「ストレートを打て」と指示するそうです。
「絶対に〇〇しちゃダメだよ」と言われると、かえって強く意識してしまうことがあるように、イメージは「文章の意味」ではなく「単語」からつくられるのです。
これを活用して、「やってはいけないこと」ではなく「やったほうがいいこと」を伝えましょうというのが「肯定的イメージコントロールの法則」です。
ケアレスミスが多い人には「ミスをするな」ではなく「丁寧にチェックしてね」と言う。
いつもダラダラ仕事をする人には「遅れるな」ではなく「時間内に終えよう」と伝える。
このように、プラスのイメージを相手に持ってもらう伝え方を、一度、試してみてもいいかもしれません。
「ケアレスミスが減らない人」の管理も上司の仕事
木下:とはいえ、いろいろ工夫してもケアレスミスが減らない人もいます。
人には誰しも弱点・欠点がありますし、完璧ではない人たち同士でも成果を出すために、チームを取りまとめる管理職がいるのです。
誰にどの仕事をしてもらうと最も成果が出るかを考えるのも上司の仕事ですから、あまりにもその人のミスが多いなら、「ケアレスミスが多すぎるので、この案件は別の人に任せることにしたよ」とはっきりと伝えてもいいと思います。
もちろん、人格否定ではなく、「この件に関しては」と苦手分野を強調して伝えるといいかもしれません。
また、「その分、君は得意な○○の件をより頑張って成果を上げて」とフォローも入れておくとよいでしょう
心理学で「ジョハリの窓」というフレームワークがあるように、自分自身が見た自己と、他者が見た自己には認識の違いがあるものです。
「ケアレスミスが多い」という事実に、そもそも気づいていない人もいるかもしれません。
当社の研修では、「他者認識の欠点は自分の欠点と受け入れ、認識すること」をゴールデンルールとし、本人が直したいと思ったら、部署内で指摘し合う仕組みにしています。
たとえば、「ケアレスミスが多いこと」を改善中の人がケアレスミスをしたら、メーリングリストで報告する。本人は自分がミスしているという自覚がないので、あえてメーリングリストで指摘するようにしたのです。
「ノーミス人間になる思考アルゴリズム」を学ぼう
木下:誰しもみんな、何かしら欠点を持っているものです。
何も、新人ばかりがミスをするわけではなく、中堅・ベテランも、経験豊富がゆえに慢心してミスをしてしまうこともあります。
だからこそ、ミスを予防する仕組みづくりを日頃からしていけるといいですね。
本書は、「問題が起きたときにどう対処するか?」というよりも、「問題が起こらないようにするためにはどんな思考アルゴリズムが必要か?」という視点で書かれた本です。
職場のトラブルの予防策や、仕組みづくりのコツ、「ノーミス人間になる思考アルゴリズム」なども掲載していますので、お役に立てれば嬉しいです。