たとえば正式な上司である課長(職員)の指示と、たまたま問い合わせてきた教員の主張とが食い違っていた場合、どうしましょう?

 あるいは自分の部署が長年かけて議論し、計画してきた取り組みに対し、「そんなものより、こっちに力を入れてくれ」という依頼が教授たちから寄せられてきたら、どうすべきでしょう?

 多くの職員がこうした悩みに日々、ぶつかっています。

 一般論としては、もし横暴な要望や批判が寄せられたのなら、たとえ相手が教員であっても臆せず意見を述べるべきでしょう。あるいは「大事な意見だけど、そのまま通すことは難しいな」という要望を受けたのなら、柔軟に、可能な範囲でのベストな解決策を探る姿勢が望ましいと思います。

 こうした判断や対応を個人ではなくチームとして行える職員組織が理想的ですし、毅然とした姿勢と建設的な提案力を備えたリーダーが管理職として部署の業務を取り仕切っているなら最高です。実際にはしかし、「先生の言うことには従っておこう」と場当たり的な対応をしてしまう職員も少なくないように思います。

 全体が一つのピラミッド型組織としてマネジメントされていたならば、指示命令系統としてはわかりやすいのですが、実際にはそうではないのが、少々難しい点です。

 2つのガバナンスが共存する組織という点は、国政や地方自治体における政治家と役人の関係性にも似ている気がしますが、この二者ほど明確に役割や責任が区分されていないだけ、大学のほうが判断に迷う場面は多いかもしれません。

私立でも国公立でも大学組織の
ガバナンスは複雑怪奇

 そして無視できないのが文部科学省という中央省庁。国立大学法人は言うに及ばず、私立にとっても経営に多大な影響を及ぼす重要な存在です。

 文科省が打ち出す方向性によって、各種の補助金などを受け取れるか否かも変わってきます。国の顔色を見ながら経営方針を考えざるを得ないという法人も少なくないのではないでしょうか。

 医療系や保育系の学部・学科を持つ大学なら厚生労働省、法科大学院を持つ場合は法務省、技術系の国家資格が関係する場合は国土交通省や総務省など、各中央省庁の動向に対応せねばならない部署は多々あります。

 公立大学法人の場合、設置者の地方自治体の影響も無視できません。知事や市長が交代した途端に名称が変わったり、統合されたりといったダイナミックな変化がしばしば起きます。