楽天グループ傘下の携帯電話子会社、楽天モバイルの携帯電話契約数が500万件を突破した。ダイヤモンド編集部が入手した内部資料によると、契約増をけん引したのは、個人向けの「Rakuten最強プラン」ではなく、取引先企業をターゲットにした「楽天モバイル法人プラン」だった。最新の累計契約数と法人プランの契約件数を大公開する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
楽天モバイル最新の累計契約数の詳細を入手!
社外秘の法人契約データを大公開
「御社には御社の本業でわれわれの事業を助けていただいていますが、今回はわれわれが御社のお役に立つ番です。ぜひ、楽天モバイルの回線をしっかりと使っていただけないでしょうか」──。
2023年夏、楽天グループ傘下の楽天モバイルの法人営業担当者は、ある企業の携帯電話の担当者に究極の営業文句を切り出した。その企業の名はベイカレント・コンサルティング。楽天モバイルにコンサルサービスを提供する取引企業だ。
楽天は、23年1月から法人向けの携帯電話サービス「楽天モバイル法人プラン」を開始している。楽天市場や楽天トラベルの出店者、楽天カードや楽天銀行の取引先をはじめ、グループの下請け業者や出入り業者を含めた「顧客・パートナー」をターゲットに「100万回線」を目指して営業攻勢を強めている。
この計画の一環で、約3700人の従業員を抱えるベイカレントも営業のターゲットになり、楽天モバイルの法人営業担当者は4000回線を提案して追い込みを掛けていた。
当初、ベイカレント側は「お付き合いはするが主回線の切り替えは無理。楽天モバイルに関係する30人の契約だけにとどめたい」と応じたが、冒頭の営業文句で“ごり押し”した結果、大量の契約獲得に成功した。
楽天の三木谷浩史会長兼社長は「諦めずにやり抜く力」を大事にしているという。その精神を地で行くかのような営業手法だが、多額のコンサル料を支払うクライアントの立場を利用して法人携帯の契約に結び付けるのは、いかにも強引な手口だ。
この「成功体験」は楽天モバイル内部の営業会議で見習うべき事例として報告されている。今なお楽天は、同様の営業手法で他の取引先にも、強力に法人携帯の採用を働き掛けているところだ。
8月28日、楽天モバイルは携帯電話の契約数が500万件を回復したと発表した。22年4月に一度500万契約を超えたが、「0円」を売りにした料金プランの廃止で契約数を減らしていた。
ダイヤモンド編集部は、楽天モバイルの最新の契約数に関する内部資料を入手した。それによると「500万件回復」をけん引したのは、紛れもなく楽天が攻勢を掛けている法人営業だったことが分かった。
次ページでは、今年8月まで過去20カ月の月次の契約数の推移と、23年1月から8月までの月次の法人契約数を大公開する。
特に、法人契約数は楽天モバイルが開示をしていない非公開データである。それを余すところなく明らかにしよう。