携帯電話事業の巨額赤字にあえぐ楽天グループの資金繰りが危機的状況にある。5月に実施した公募増資の資金で今年の社債償還を乗り越える算段だが、さらなる資金調達は必須。いよいよ「楽天解体」の足音が近づく。特集『決算書で読み解く! ニュースの裏側2023夏』(全27回)の#19では、楽天が取り得る4つの資金繰りの選択肢を徹底検証した。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
巨額赤字、現金流出、借金返済
最大の課題は「資金繰り」
2022年12月期に4年連続で最終赤字を計上した楽天グループでは、今期も携帯電話事業の巨額赤字が計上されることになりそうだ。
携帯子会社の楽天モバイルの赤字の最大要因は四半期ごとに1500億円を超える営業費用だ。その多くは基地局開設費用やKDDIに支払うローミング費用などネットワーク費用が占めている。
だが、楽天は5月にKDDIローミングの延長と拡充を決めた。これにより基地局開設費用を抑えて減価償却を減らしていく狙いだが、ローミング費用はかさむ。結果として楽天は、三木谷浩史会長兼社長が公約していた「今期中の携帯事業の単月黒字化」を断念した。
最も深刻なのは資金繰りだ。携帯事業の設備投資は年間3000億円を超え、前期の「金融事業を除くフリーキャッシュフロー(FCF)」のマイナス幅は7482億円に達した。
KDDIローミングの延長・拡充で今期の設備投資は従来計画の3000億円から2000億円に圧縮するが、KDDIへの追加支払いはかさみ、今期も巨額の資金流出は不可避だろう。
さらに、財務諸表を読み解くと、手元に残された現金は一層の厳しさを物語る。
楽天グループの23年3月末の現預金は連結ベースで4兆5042億円。だが、この数値は傘下の楽天銀行の現預金が大半で、実態を表すのは、楽天市場や楽天モバイルの資金を一括管理する楽天グループ単体の現預金だ。それによると、現預金残高はわずか1175億円にとどまる。
さらに、楽天を追い込むのは今後5年で1兆2000億円を超える社債償還だ。このままでは、一段の資金調達が必要になるのは間違いない。
タイムリミットが迫る中、次ページでは、楽天が取り得る4つの資金繰り策の選択肢を挙げると共に、その一つ一つの実現可能性を徹底検証した。