石井哲代・中国新聞社 著
3・人をよく見て知ろうとする
教師時代、小学5年生の担任をしていた時、算数の時間になると落ち着きがなくなる男の子がおったの。様子を見ていたらどうも九九でつまずいてることに気付いてね。「九九が分からんのじゃね」って声を掛けたら、その子が泣きだしたん。情けない気持ちと、助かったっていう思いが入り交じったような泣き顔で。その子に九九を教えると夢中で勉強するようになりました。うれしかったなあ。
相手のことを知ろうとする、観察するいうのは教師時代からの癖ですかなあ。元気ないなとか、少し痩せちゃったかねとか、ちょっとした変化に気付くことは大人同士のつきあいでも大事なことじゃと思います。声掛けの内容によって相手の反応も変わる。この人、私のことをよう見てくれてるなあと思うたら、安心して自分をさらけ出してくれるようになるんです。
4・マイナス感情 笑いに変換
食べるものが「ない」とか、お金が「ない」とか否定の言葉を使う時、語尾に「ナイチンゲール」を付けます。「お金がナイチンゲールでございます」ってな感じです。そうしたら皆さん、クスッと笑うてくれる。同じ「ない」でも笑いに変えると気持ちがええの。「ないない」ばかりじゃ気分が沈むから言いたくないんです。心の落ち込みは魔物です。落ち込みそうになったら早めに自分を助けてあげんといけんのです。
5・手本になる先輩を見つける
知らず知らずのうちに、しゅうとめさんのまねをしている自分がおります。暇を見つけては庭や畑の草を取り、いつもきれいにしとっちゃった。毎晩、仏さんに大きな声でお経をあげるのも、しゅうとめさんから引き継いだことです。
26歳でお嫁にきました。その頃、しゅうとめさんは薪を背負って町へ売りに出よっちゃった。売ったお金で、まだ珍しかったソーセージを買うてきてくれてね。学校勤めをする私ら夫婦の弁当のおかずにって。陽気で働き者のところも、ちょっとした心遣いも、いつもやってみせてくれました。皆さんも、手本になるような先輩を探してみたらええです。まねをしながら、体に染み込ませていけたらもうけものです。