高市税制改革「1億円の壁」と「年収の壁」見直しで負担の歪み是正も、少子高齢化の最重要課題は“完全スルー”Photo:SANKEI

26年度税制改正、何か変わり始めたのか!?
「現役世代の空洞化」の最重要課題は手つかず

 高市早苗政権が2025年12月26日に取りまとめた26年度(令和8年度)税制改正は、首相が掲げる「責任ある積極財政」や「成長に向けた税制」を、具体的な制度として示したものだ。

 物価高に賃金の伸びが追いつかない状況が続く中で、個人所得課税の軽減や投資を後押しする税制措置を通じ家計を支え成長を図る意図が読み取れる。超富裕層負担のゆがみ是正や、「手取り増」を掲げた低中所得層の課税最低ライン引き上げで、負担の問題にも一部踏み込んだように見える。

 具体的には、金融所得課税や個人所得課税に関して注目すべき論点が盛り込まれた。いわゆる「1億円の壁」への対応として「富裕層ミニマム税」を課税する所得を30億円から6億円に下げて富裕層課税を拡充すること、NISA(少額投資非課税制度)の利用可能な年齢を拡大し、投資の裾野を広げようとしていること、暗号資産の分離課税に踏み切ったこと、そして所得税の基礎控除の拡大により、課税されない所得水準が実質的に178万円まで引き上げられる点などだ。

 暫定と言いながら長年変わらなかったガソリン暫定税率の見直しは、「何かが変わり始めた」という印象を国民に与えている。政治が生活に近いところで動き出したと受け止め、これを歓迎する声も少なくない。

 だが一方で、少数与党体制の下で、連立相手の日本維新の会の要求だけでなく、国民民主党など野党の要求を“丸のみ”した。その結果、税制としての統一感は損なわれた。政策を前に進めるには、これまで以上に野党の主張に耳を傾ける必要がある。

 そのことは正しいとしても、基礎控除拡大による減税では、所得によって控除額が異なるなど構成が複雑になった側面もある。

 さらに最も大きな問題は、少子高齢化で“現役世代の空洞化”が加速する日本社会で負担の問題の最重要課題を完全に脇に置いてしまったことだ。