これらの機械学習の手法を一段と高度化させたのがディープラーニングです。ディープラーニングは、機械学習のアルゴリズムであるニューラルネットワークを活用した学習の手法で、データを入れる入力層、入力層から流れてくる重みを処理する中間層、結果を出力する出力層で構成されています。
これにより、十分な学習データさえあればニューラルネットワーク自体がデータ群の特徴を自動抽出することができます。中間層が入力データをさまざまな大きさに切り取って特徴を割り出すため、与えられたデータを基に細部のパターンから大きな構造、全体の輪郭までを抽出できます。
このため、画像のような記号化できないデータのパターンも認識できるようになりました。画像認識以外にも、ディープラーニングは音声認識や自然言語処理、異常検知などの得意分野があるため、自動運転技術や自動音声翻訳などにも応用が広がっています。
このように、AIの機能は進化してきましたが、その出力は必ずしも完璧なものではありません。実際に近年、AIにより提供されているサービスを使用してみると、不十分と感じることも多々あります。しかしこれは、AIに対してその出力を期待し過ぎた結果といえるのです。
機械学習で実施できる作業の精度は、原理的に100%になることはありません。専門的な知見と経験をもつ人間には、まだ遠く及ばないことが大半です。しかし、これをもってAI技術を役立たずだととらえることは大きな損失であるといえます。
AIが盛んに活用されている産業分野を見渡してみると、防犯カメラの解析や顔認証、人工衛星の解析など、人間に必要とされている高度な思考や判断が必要ではないものが大半です。その役割の多くが大量のデータを処理して近しい値を出すことに使われ、最終段階や重要なところは人間がチェックするという工程が踏まれます。
このように、AIはいうなれば熟達していない大量の人手と同様の役割を果たします。少人数ではチェックできない大量のデータを整理し、近しい答えを出すことで、エキスパートの判断を補助する役割を担っているのです。
AI以外のテクノロジーに関しても似たようなことがいえます。人間の脳の働きは非常に複雑かつ柔軟で、今のところ機械が完全に再現できるものではありません。テクノロジーという労力を活用できるのはあくまでも代替できる部分であり、私たちが上手にその労力を活用していくいわば「マネジャー」としての役割を果たせばよいのです。