みずほ銀行のシステムトラブルの裏で起こっていた「IT部門の超弱体化」と「ユーザー部門が自前で作ったシステムの乱立」とは?特集『企業・銀行・官公庁・ITベンダー・コンサルが大騒ぎ! ヤバいDX 2023』(全13回)の#2では、あのシステムトラブルの渦中を中から見ていた元みずほ銀行マンをゲストに、みずほトラブルの内側を座談会で語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
Henry @HighWiz 大手SIerの大規模プロジェクトのPMを経て総合コンサルへ転身
ケビン松永 @Canary_Kun 大手SIerから独立してフリーのITコンサルやってます
よんてんごP @yontengoP ブラックIT業界を渡り歩く病人ツイッタラー。薬を飲み忘れる
むぎSE @MUGI1208 社内SE社畜ツイッタラー。炎上プロジェクトの遭遇率が高め
shin @shin_ofshins ウェブとアプリに詳しいコード書く系スタートアップ経営者
かち @kachi_saas SaaSの最新トレンド(リストラ)を身近に感じる外資ITソフトベンダーのセールスエンジニア
SW @Diamond_IT_SW コンサルからメーカー情シスに移籍した企業哀戦士
木公川 元金融SE畑むぎ大先生により臨時召喚されたみずほIT部SEマン。脱出済
「ああ、やっぱりやらかしたな」という
諦めの気持ちでした
――今回はなんと、以前のIT座談会で話題になった、みずほ銀行のシステムトラブルの内側を知る中の方をお迎えしてのIT座談会です。あのとき、中では何が起きていたのでしょうか?
木公川 中から見ても「ああ、やっぱりやらかしたな」と諦観していました……。
トラブル当時、「なんでこのタイミングでIT部門(IT部)から業務部門(ユーザー部)に対して、『こんな内容の質問』をいまさら出すんだ?」っていうことが多々ありまして。銀行システムの更新プロジェクトとして固く確認して進めるべきところが、スケジュール含めてしっかりしてなかった。
なぜかというと、そもそもみずほのIT部は、システム更改にパワーを取られ続け過ぎていて、社内組織向けの体制と立場が弱過ぎたんですね。
なのでユーザー部が勝手に、基幹系(勘定系)の先にある情報系につながる「自部署向けシステム(EUC)」を作ることが常態化していた。一応、社内の最低限のルールにはのっとって構築するけど、各ITベンダーも出向者をユーザー部に送り込み、ユーザー部は独自判断で大小のEUCを乱立し、IT部はそれを止められない。根幹たる基幹系にぶら下がる多数のEUC……。
つまりユーザー部の全体像を把握し切れないまま、みずほは銀行システムの基幹系を全部入れ替えたんです。
よんてんごP いいスよいいスよ、早速ワクワクするワードが飛び交ってますね。
SW うちもユーザ部主導で入れたシステムはありますが、常態化しているとなると、なかなか厳しいですね。
木公川 これで何が起こるかというと、ユーザー部側は業務継続に必須なEUCを移行後も稼働させるために、IT部側から小出しに垂れ流されてくるMINORI(みずほの新勘定系システム)情報を常に追い掛かけ続けなきゃならず疲弊する。しかも移行スケジュールもコロコロ変わる。
さらに「こっちのデータは初回に一括切り替えですが、そっちのデータは店群移行となり複数回グループごとに切り替えます」などと、キー項目の概念自体がMINORIの導入前と後で異なるマスターデータをガッチャンコする対応までユーザー部に振られてくる。
そういう地獄の中で、「切り替え後1週間はこのデータ使えませんでした」とか、「この個人向けマスターデータは移行に失敗し、復旧もできません、がんばって1から作り直します」などの、表には見えない大混乱が実は裏であったんですね。
――みずほって、システム移行のときに9回オンラインサービス止めてましたよね。その間旧みずほコーポレート銀行、みずほ銀行、みずほ信託銀行などの各システムを段階的につないでいったという。裏では大変だったんだな……。それで、結局あの9回にも及ぶシステムトラブルは、何が直接的な原因だったんでしょうか?
2021年、9回に及ぶ大トラブルを起こしたみずほ銀行。その裏には何があったのか? そして、日本屈指のメガバンクと他の日本の限界中小企業が「そっくり!」だったITトホホネタとは?みずほの当事者とIT業界の事情通たちの座談会で全てを明らかに!