DXのイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

「失われた30年」――。低迷が続く日本の開発力を復活させるためには革新的な発明が必要だが、研究者・技術者らの前にノイズだらけの膨大な特許調査が立ちはだかる。調査の効率化を後押しするAI(人工知能)の活用法とは。本稿は、古川智昭『日本の開発力を甦らせる知財DX』(幻冬舎メディアコンサルティング)の一部を抜粋・編集したものです。

膨大な手間を要する特許調査業務
求められるAI(人工知能)での効率化

「日本企業の開発力を甦らせる」ことに求められるのは発明の促進です。その発明を促進するための知財業務の変革・改革にどうアプローチしていくかを考えると、研究・開発部門の大きな付帯業務として存在し、知的財産部門がその履歴を管理しきれず、非効率さが残っている特許調査業務が大きな課題の一つとして浮かび上がります。

 多くの企業にとって特許調査のプロセスは紙媒体でのアナログ作業や、研究者・技術者による翻訳作業、エクセル管理による過去履歴の管理不足など大きな問題を抱える業務であるからです。

 特許調査は、その業務プロセスや業界特有のコスト構造、他部署との連携という観点からテクノロジー(科学技術)の活用が難しいと考えられてきた分野です。しかし、その業務を1つひとつ分解して考えれば、さまざまなポイントで最新のテクノロジーを活用して補助できる業務が多くあります。

 一方で、知財業務に限らず、法務や技術、研究・開発部門など、特に専門性が高い領域でテクノロジーに対する評価はあまり高くありません。特にAI(人工知能)をはじめとした機械による推測能力を活用した機能については、抜けや漏れがあるかもしれないという恐れから、現時点では活用したとしても人の手によるダブルチェックが必須で、導入するとかえって手間が掛かると考える人もいるようです。

 確かに、テクノロジーの知財業務への導入については、自動運転のように1つの作業を完全に任せてしまえるほど、まだ進歩しているとはいえません。ただ、使いようによっては、人間の能力を補助するものとして十分な役割を果たせる機能は多くあるのです。

自動運転技術などで応用が進む
それでも人的チェックが必要な理由

 近年の業務効率化システムは構造が非常に高度になっていて、一般の人間には仕組みを深く理解して使うことが難しくなっています。特に多くの業務効率化システムで活用がなされているAIはその代表格といえます。

 AIは正式名称を「Artificial Intelligence」といい、人間の知能や振る舞いの一部をソフトウェアで再現したものを指します。定義は明確には示されておらず、多くの企業によるさまざまなアプローチにより、人間の知能に近づく機能が開発されているのが現状です。

 新しいテクノロジーのような印象もありますが、開発の歴史は70年にも及んでいます。最近では、アップルのスマートフォンに搭載されている「Siri」やアイロボットの掃除ロボット「ルンバ」、ソフトバンクのロボット「Pepper」などが開発・発売されたことで存在が身近になりました。