警察庁は来年の通常国会に向け、自転車の酒気帯び運転や走行中にスマートフォンを操作する「ながら運転」に対する罰則や、悪質な交通違反に青切符(交通反則切符)の交付を可能にする道路交通法改正案提出の検討を始めた。現行法では酒酔いに罰則はあるが、酒気帯びにはない。ながら運転では死亡事故も起きており、重大事故につながる危険な運転を抑止するのが狙いだ。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
自転車の酒気帯び運転は
違法だが罰則規定から除外
酒気帯び運転は、呼気1リットル中に0.15ミリグラム以上のアルコール濃度が検出された状態などを指す。道交法第65条は「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と規定しており、自転車を含む軽車両も「違法」ではあるが、罰則規定からは除外されている。
一方、酒酔い運転はアルコール濃度に関係なく、正常な運転ができない恐れがある状態(足元がふらついていないか、言動がしっかりしているか、などで判断)で、自転車でも「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科される。
ここ10年の新聞のデータベースを調べたところ、19年に埼玉県部長(当時)、同年と15年には京都府警の警部と警部補がそれぞれ道交法違反(酒酔い運転)容疑で書類送検されている。
自転車の酒酔い運転が加害原因となった死亡事故は見つからなかったが、警察庁の統計では昨年に摘発されたのは116件に上り、それ以前も例年100件以上ある。違反が発覚するのは事故による通報のケースが多いので、業務上過失致傷事件の加害者が含まれるのはまず間違いない。
加害に限らず、正常な運転ができなかったため被害者になることもあり得る。筆者が全国紙の地方支局時代に業務上過失致死事件の公判を傍聴した際、自動車で自転車の男性をはねて死亡させた被告が「被害者を救助しようとしたら、すごいお酒の臭いがした」と証言。証人尋問で救急救命医も同様の発言をしており、被告は有罪にはなったものの、判決が「被害者は酩酊(めいてい)状態で、事故の回避は困難だった」と追認し、執行猶予が付いたのを記憶している。
ふらつくレベルの状態で運転するのは言語道断だが、自動車やバイクほどのスピードは出ないにしろ、やはり酒を飲んでの運転が危険なのは言うまでもないだろう。