ここ数年、「企業理念」を新たにつくろうとする動きが強まっています。というのも、単なる利益の最大化だけでなく、「社会的意義がある活動をしているか」という評価基準が、消費者・パートナー企業・投資家・従業員にとって重要になってきているからです。
これからの時代は、事業の社会的価値を示せない会社は存続することが難しく、会社全体で目指す方向性を言語化した「企業理念」を中心に据えた経営が不可避になっていきます。
そこで今回は、企業理念のつくり方・活かし方を網羅的に解き明かし、「新時代の経営本の決定版」「この本はすごすぎる」と称賛されている『理念経営2.0』の著者・佐宗邦威氏にご登壇いただいた、本書刊行記念セミナー(ダイヤモンド社「The Salon」主催)で寄せられた質問への、佐宗氏の回答を公開します。(構成/根本隼)
Q. 企業理念をつくり直すべきでしょうか?
読者からの質問 業績が安定している事業を承継する際、先代が掲げていた企業理念をどのように受け継いでいけばよいでしょうか?
佐宗邦威(以下、佐宗) 僕の周りでは、業績が安定している会社が事業を承継する場合、既に存在している企業理念はそのまま維持するよりも、時代に合わせて考え直すケースが多いです。
例えば、鹿児島にある小平株式会社という総合商社は、事業承継のタイミングで、先代ではなく「次世代のメンバー」が中心になって、ビジョン・ミッションを策定し直しました。
組織をこれまで支えてきた先代と、事業を承継していく次世代メンバーとでは、生きてきた時代がまったく違います。なので、これからを担う次世代、特に組織の核となるメンバーが「自分ごと」として捉えられる、いまの時代に合ったビジョンをつくる必要があるからです。
過去と未来をつなぐ方法
佐宗 しかし、彼らは同時に、先代を巻き込んで会社の歴史を振り返る時間をとって、「会社として変えてはいけない原点」をあぶり出し、それを言語化しました。そして、その「原点」を、ミッションやミッションステートメントに反映したんです。
業績が安定しているとはいえ、事業承継の際は、「さらにもうひと段階上を目指そう」という機運が高まるはずです。そのため、組織を引っ張る原動力になる「ビジョン」のつくり直しはとても有効です。
その上で、これまでの事業とこれからの事業をつなぐ結節点として「ミッション」を掲げれば、過去からの連続性があって、なおかつ未来を見据えた会社運営が可能になるのではないでしょうか。
(本稿は、ダイヤモンド社「The Salon」主催『理念経営2.0』刊行記念セミナーで寄せられた質問への、著者・佐宗邦威氏の回答です)