こうした中、政府は物価高に対応するための経済対策として、9月末で終了予定だった電気・ガス料金や燃料費(ガソリン・軽油・灯油)抑制のための補助金の延長を検討している。とはいえ、これらの補助金は必ずしも有効な対策とはいえず、延長には慎重になるべきである。

 その理由は、相対的に物価上昇に対応する余裕がある高所得者層への恩恵が大きいからだ。

 確かに、光熱費やガソリン代が消費支出に占めるシェアは低所得者層ほど高いため、補助金の延長は困窮する家計の負担軽減につながる側面がある。

 一方、補助金の対象となる品目の消費金額は高所得者層ほど大きい。22年の家計調査によると、これらの品目への支出額は、年間収入下位20%が17万円であるのに対し、上位20%では32万円と、1.9倍に上る。これは、補助金の大部分が高所得者層の負担軽減に使われることを意味している。

 エネルギー価格は昨年夏をピークに上昇が一服しており、補助金の延長は急激な価格上昇に対する激変緩和措置という本来の制度の趣旨にも反している。今後の物価高対策は、低所得者層に的を絞った負担軽減策や、持続的な賃金上昇を促すための施策に軸足を移すべきである。

(日本総合研究所調査部 副主任研究員 村瀬拓人)