電気・ガスの値上げ、いつまで続く?ドイツのパニックが他人事ではない理由日本では「今起きている電気・ガスの値上げは一過性のものであり、いずれ沈静化する」と思っている人が多いかもしれないが…(写真はイメージです) Photo:PIXTA

この夏の猛暑を受けて、エアコンの電気代にやきもきしている人は多いのではないでしょうか。ウクライナ戦争で“世界のエネルギー地図”は大きく書き換えられました。「電気やガスをいつでも好きなだけ使える」時代は終わり、生活に不可欠なエネルギーをどう確保し、どう守るべきか――ドイツ在住ジャーナリストの熊谷徹さんの著書『次に来る日本のエネルギー危機』(青春出版社)から、私たちの生活に直結するエネルギー問題を読み解きます。

一時、2桁の伸びを示した電気・ガス価格が教えるもの

 今年春に日本の知人と話すと、「2022年のウクライナ戦争勃発以降、電気料金が驚くほど高くなった」という嘆きをよく聞く。「電気やガスの使用量は増えていないのに、支払う料金が増えた」とか、「電気料金が突然上がったが、銀行口座の残高が少なかったので、電気料金を引き落とせなかった」という声も聞いた。

 経済産業省は2023年5月19日、電力会社7社が申請していた規制料金(国の規制を受けている電気料金)の引き上げを認可した。これによって家庭向けの電気料金は2023年6月1日から、5月に比べて800円から2700円、上昇した(ただし同年8月、燃料価格の下落を受けて、大手電力会社8社は8月請求分の電気料金=規制料金を値下げしたが)。

 我々日本人は、2022年以降、物価上昇に頭を悩ませている。総務省によると、日本の2022年度の消費者物価指数は、前年度に比べて3.0%上昇した(天候による変動が大きい生鮮食料品を除いた数字)。第2次オイルショックの影響が続いていた1981年以来、約41年ぶりの高い水準だ。

 総務省が7月21日に発表した2023年6月の消費者物価指数も、前年同月比で3.3%上昇している。

「電気やガスが自由に使えるのは当たり前」なのか

 インフレの大きな原因の一つは、電気やガスなどエネルギー価格の高騰だった。総務省によると2023年1月の電力価格は前年同月比で15.3%、ガス価格は18.2%上昇した。日本では電気・ガス料金を気にしない人が多かったが、2桁の上昇にはさすがに驚きを隠せないでいる。現在電気・ガス価格は沈静化の傾向を見せているものの、去年から今年春にかけての価格高騰は、多くの人にショックを与えた。

 これまで日本では、「電気やガスはいつでも好きなだけ使えるもの」と思っている人が多かったのではないだろうか。

 朝起きて、壁のスイッチを押すと部屋に電灯がともる。お湯を沸かすためにガスコンロのスイッチをひねれば、火がつく。夏にエアコンのリモコンのボタンを押せば、冷房が作動して涼しくなる。冬には、同じリモコンのボタンを暖房に切り替えれば、部屋が暖かくなる。風呂場の蛇口をひねれば、ガスで暖められたお湯が出てくる。PCやタブレットの電源を入れれば、勝手に無線LANでインターネットにつながる。快適で、便利な暮らしだ。

 私は、1990年から33年間ドイツで働いているが、この国でも、ほとんどの市民は「電気やガスが自由に使えるのは当たり前」と考え、料金にもあまり注意を払っていなかった。

 だが、安いエネルギーをいくらでも自由に使える暮らしというのは、本当に当たり前なのだろうか?

ドイツ市民・産業界を襲ったガス不足のパニック

 ドイツでは、2022年2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を開始して以来、市民は頭をガツンと殴られるような変化を経験した。戦争をきっかけに、エネルギーに対する意識が根底から覆ったのだ。

 49年間にわたって西欧に天然ガスを送り続け、近年はドイツが輸入する天然ガスの多くを供給していたロシアが天然ガスの輸出を打ち切るという、初めての事態が起きた。そのため、一部のエネルギー供給企業は、顧客に対して、ガス・電気の料金を2倍もしくはそれ以上に引き上げると通告した。「ロシアはエネルギーを政治的な武器として使わない」と固く信じていたドイツ人たちの「常識」が打ち砕かれた。