「Zippar」はマチの暮らしをどう変える?
バス運転手の過酷な労働環境の改善にも

Zipparの市街地走行イメージ(秦野市資料より)Zipparの市街地走行イメージ(秦野市資料より)

 Zipparは普通の鉄道より、建設にかかる手間・コスト・期間を必要としない。渋滞が激しい幹線道路があったとして、まず中央分離帯に支柱を立て、2本のロープ架設+カーブ部での鉄骨の構造物の設置ができればいい。この条件なら、密集した住宅街の中にある片側1車線の道路でも真上にZipparを通せる。工期は着工から1年程度で済むという。

 もしこれが高架鉄道なら、1編成100トン以上の車両を支えるために幅数mのコンクリの橋桁を建てて、車線が狭くなった分の道路拡張も行って…と数年がかりの工事となる。LRTでも、複線ならその分の道路幅が必要だ。Zip社によると、過去にモノレールやLRTなどの導入を断念した自治体から「Zipparなら建設できるのでは?」という問い合わせが相次いでいるという。

 また、Zipparは自動運転のため運転士も不要。最短12秒ごとの運転で、最大1時間3600人程度の輸送が可能だ。首都圏には1日の利用者が万単位、携わる運転手が100人単位に上る鉄道やLRT並みのバス路線も多く、それらをZipparに置き換えれば、バス運転手の人手不足の解消にもつながる。

 なかでも、朝晩の通勤・帰宅ラッシュだけ極端に混雑する工業地帯のバス路線は、Zipparが効果を発揮できるのではないか。こういった路線のバス運転手は、「最大16時間拘束・中休み勤務(朝と夜だけ運転、昼間は休憩扱い)」や極度の連勤に迫られがちだ。変形労働制による極端なシフトを背景に人手不足が深刻で、労働環境を改善しようと近年、ストライキも発生しているほどだ。

 こういった地区にZipparを導入すれば、自動運転で「朝は全車両総出でまとめて通勤輸送、昼間は最低限の運転」といった体制を敷ける。これを「バス運転手のリストラだ!」などとネガティブに捉えるのではなく、Zippar導入をきっかけに他路線へ運転手を振り分け、運転手1人当たりの負荷を減らすバス会社全体の働き方改革(待遇向上や変形シフトの減少なども含む)につなげてほしいものだ。