――でも、その金額だとその日の暮らしで終わっちゃわない?
「まあそうだね。でもメシ代なんてそんなにかからない」
――いつも何を食べてるの?
「コンビニ弁当かな。お金があるときはネカフェ(アプレシオ)でカツカレーとか注文したりするけど」
――ちょっと贅沢にしゃぶしゃぶとか焼肉とか食べないの?
「自分のお金では行かない。たまにお客さんに奢ってもらうことはあるけど」
――借金は?
「2週間くらいで返し終わったよ。夜9時ごろ、“仕事”を終えて泊まってるアプレシオに帰るよね。すると翌日の昼、“彼氏”がアプレシオに来てその日稼いだぶんを回収していく感じで。東京に戻ってネカフェ(インターネットカフェ)暮らしを始めたのは1カ月半前のことで、最初はグランカスタマ(ハイジアからほど近いインターネットカフェ)にいたんだけど、なんか店員が男性客と話すなとか急にうるさくなって。それで友達から『アプレ(シオ)のほうが過ごしやすいよ』って聞いて移ってきた感じ」
“うるさくなった”とは、2022年6月11日に写真週刊誌『FRIDAY』が報じた「新宿・歌舞伎町にある『売春ネットカフェ』潜入ルポ!」の記事をさしていた。グランカスタマの個室で「ネットカフェ売春」が横行していることは、もとより広く知られた公然の秘密であったが、同誌は同店の実名を出し、改めてここが売春の温床であることを白日のもとに晒す。当初、“彼氏”はグランカスタマにカネの回収に来ていた。同誌が実名を出した影響は思いのほか大きく、“彼氏”は買春目的の客と間違われるため店に無断で来れなくなっていたのだ。
――カラダを売ることに対して、いつごろから“仕事”って割り切れるようになったの?
高木瑞穂 著
「初めてやったときに思った。好きじゃない人とすることで、感情がわかないことで、『これ、仕事だな』って。なら割り切っちゃおう、って。で、それからずっともう、仕事って割り切ってやってる」
――補導やみかじめ料のたぐいは?
「ないし、払ってない。払えとも言われたことないよ」
――これからも街娼を続けるの?
「うーん、デリヘルとかで働くことも考えてはいるよ」