「多少強引でもみんなやっちゃってますね」

 客に売り掛けをさせることについて、あるホストはそう話した。

 若ければ、カネを回収する方法などいくらでもある──こんなドミノ倒しの悲劇があちこちに拡散している──梨花もそのひとりに過ぎなかったのだろう。

売り掛けを“飛んだ”
彼女に起きたこと

 ここからは、梨花と筆者の会話の一部だ。

――その売り掛けはどうしたの?

「そのことをきっかけに、“彼氏”に対して急に冷めちゃって、飛んだ」

“飛ぶ”とは、売り掛けを払わず逃げることを意味している。

――どうやって?

「名古屋に行った。で、出稼ぎしながらまた名古屋のホストとしばらく遊んで気を紛らわしてた」

――逃げ切れたんだ。

「ううん。そしたら、名古屋のホストとウチが掛けを飛んだ“彼氏”が実は繋がってて、裏を使って拉致られた」

――“裏”って?

「ヤクザみたいな人です。で、出稼ぎで稼いだ35万円と、これ以上逃げられないようにスマホとカバンも没収、みたいな。ホストはそこまでやるんだよ。スゲエよ。諦めるホストも多いって聞いて軽い気持ちで飛んだけど、その人はトコトンまで追いかけるタイプだったみたいで」

 そこから東京へ戻され、“彼氏”に監視されながら出会いカフェでの売春で残り25万円の借金返済の日々は始まり、いまに至る。公園を知ったのは、やはり出稼ぎを教えてくれた出会いカフェの売春仲間からだった。

 25万円などすぐに返せると思っていた。だが出会いカフェでの売春を覚えてから数カ月が過ぎていた梨花は、好事家たちからすでに“ベテラン嬢”とみなされていた。

 だからというわけではないが、客が思うように取れなくなっていた梨花は、「ならやってみようか、みたいなノリで始めた」と振り返る。

 そのころ公園は、街娼の素性や売値を記したある好事家のツイートがバズり、女の子と買春客とで溢れかえっていた。

「多い日で4人とか5人とか。(売値は)1(万円)とかイチゴー(1万5000円)とかで。最近は、今日あまり客が付かなそうだなって思ったら、ホテル代込みで1万とかに値下げして、とりあえずネカフェ代やメシ代を確保するとかはあるけど」