「二代目」が実権を握るには、本来10年かかる
中古車販売会社・ビッグモーターの不正疑惑が先般世間を騒がせた。報道は下火になりつつあるが、影響は保険業界にも飛び火し、キーパーソンといわれる前副社長は雲隠れしたままである。今回はある種の「二代目」がいかに実権を掌握し、組織の腐敗を引き起こすかについて考えてみたい。
二代目と一口に言っても、「青は藍より出でて藍より青し」のパターンもあるので、あらゆる二世や二代目が「ドラ息子、ドラ娘」「ぼんくら」と決めつけるわけにはいかない。しかし、親の跡を継いだ二代目社長は、少なくともその段階においては、能力不足、経験不足、支援者不足と不足だらけであることが多い。
にもかかわらず、組織を率いなければならない立場だ。自分の意思決定が懐疑的に受け取られているのではないかと常に疑心暗鬼になる。「こいつ、わかってないな」という顔をする古参社員がうっとうしい。表立って自分に楯突くことはなくとも、その実、内心は自分を軽んじているような古参社員は「総取っ替え」したい。
といっても、ほとんどの場合、「総取っ替え」してしまうと業務が遂行できない。そこで、時間をかけて他社から自分に忠実な優秀な人材を採用したり、若手を育成したりして、ブレーンの入れ替えを進めていく。そうやって、自分の思い通りの経営体制をつくりあげるためには、10年くらいかかるのが普通である。
しかし、普通でないパターンがある。