経営難に陥っていた中国の不動産大手、恒大集団が米連邦破産法第15条の適用を申請した。いよいよ中国の不動産バブルは崩壊するのか。それによる世界経済、商品市況への影響は。そのリスクシナリオを読み解く。(マーケット・リスク・アドバイザリー共同代表 新村直弘)
恒大集団の破産は
不動産バブル崩壊の予兆?
中国の不動産バブルが崩壊する予兆なのだろうか。中国の不動産大手、恒大集団が2023年8月、米国で連邦破産法第15条の適用を申請した。中国政府が20年8月に「三条紅線」という不動産融資厳格化の方針を示して以降、恒大集団の経営は急速に悪化していた。
三条紅線は、「資産に対する負債比率が7割を超えないこと」「自己資本に対する負債比率が100%を超えないこと」「現金に対する負債比率(現預金÷有利子負債)が1を上回ること」――の3つを指す。
これらを満たさない場合、銀行融資などの資金調達に制限がかかる仕組みだ。この仕組みは、平成バブル経済崩壊の引き金の一つといわれ、当時の大蔵省が指導した「総量規制」(不動産向け融資規制)の中国版ともいえる。
中国の不動産ビジネスは日本と異なり、建設している最中から購入者が代金を支払う形になっている。すなわち、住宅が完成していなくても、購入者からの資金調達ができる。恒大集団は、この資金を資金繰りに充てていた。
しかし、三条紅線による規制強化で、恒大集団は資金繰りが悪化し、住宅の建設が滞った。その上、購入者の間で支払いを拒否する動きが広がり、さらに資金繰りを悪化させて、破産に至ったのだ。
つまり、恒大集団の破産は、特有のものではなく、その他の不動産会社でも類似の事象が発生している可能性がある。
もともと、中国の不動産バブルの崩壊リスクは、以前から指摘されてきた。習近平政権になって以降、不動産投資バブルがたびたび発生している。習近平政権は、このバブルを人口動態がピークアウトした中で処理しなければならなくなっており、難しい対応を迫られている状況だ。
通常であれば、余剰不動産を海外投資家などに売却して、不良債権処理を行うケースが多い。しかし、中国当局の都合でいろいろなものが接収されてしまうことが起こり得るので、積極的に物件を物色する投資家がいるとは考え難い。
中国における不動産売買は、カントリーリスクが大きく、欧米での不動産売買と同列に議論できない。不良債権の海外投資家ヘの安売りなどの手段が選択し難ければ、中国国内で対応するしかないのである。
では、どのような対処の方法が考えられるのだろうか。