エジプトのピラミッド、イースター島のモアイ、ナスカの地上絵……世の中にはいつ誰が何の目的で設けられたものなのかわからない不思議な遺構、遺物が多く残されている。日本も同様で、出自や素性の知れないミステリアスなスポットが各地に存在する。それらの中からとりわけ奇妙な3つのスポットについて、江戸時代の医師・橘南谿が自著で「日本三奇」と紹介し、今日に伝えられている。知る人ぞ知る日本の不思議にご案内しよう。(フリーライター&エディター 友清哲)
宙に浮かぶ巨石「石の宝殿」
暇さえあれば全国をほっつき歩いているせいか、定番的な観光スポットに物足りなさを感じるようになって久しい今日この頃。もちろん北海道や沖縄の自然は美しいし、京都や奈良の伝統文化は誇らしく感じるものの、もう少し違った刺激をローカルに求めてしまうのは、好奇心旺盛な物書きの性なのかもしれない。
そんなマンネリ感に苛まれていた筆者にとって、江戸時代から継承されてきた「日本三奇」の噂は、とてつもなく刺激的なものだった。
奇妙というだけの理由で何百年も語り継がれているのもすごいことだが、調べてみればそのひとつひとつが実に不思議でインパクト絶大。これはぜひ、3つのスポットをコンプリートしなければと思い立ったのが、筆者と日本三奇の邂逅である。本稿ではその旅の模様をレポートしたい。
まずご紹介するのは、兵庫県高砂市にある生石神社だ。古代から竜山石の採掘地として栄えた竜山の中腹に鎮座するこの神社は、3世紀頃の創建と伝えられる長い歴史を持っている。
ここに、世にも珍しい御神体が祀られている。国の史跡にも指定される日本三奇のひとつ、「石の宝殿」である。
およそ直方体の石造物で、横6.4メートル、高さ5.7メートル、奥行7.2メートル、重量は推定500トンという巨大なもの。なんとも不思議なのは、この巨石が一見、宙に浮いているように見えることだ。