あなたは妻がスマホで何を見ているか知っているだろうか。昭和の女性向けコンテンツといえば、昼間のワイドショーやゴシップ記事の女性週刊誌。平成は女性タレントなどのブログだったかもしれない。しかしいま、世の女性たちが自由時間を注ぎ込んでいるのが「コミックエッセイ」だ。現代の女性の本音を代弁し、2000年以降急速に浸透した「コミックエッセイ」について、時代背景や読者に支持されるポイントを解説。妻がハマっている場合、夫が取るべき行動とは?(コンテンツプランナー 今岡由季恵)
作者の体験を元にした
ノンフィクション
昼休み、電車の中、食事や診察までの待ち時間から寝る前まで、「暇つぶし」にはスマホが欠かせない。老若男女が吸い寄せられるように画面を見ている。中でも漫画を読んでいる人は少なくないだろう。スマホで漫画を読む手段は、電子書籍やコミックアプリだけではない。SNS投稿や、Webサイトの記事として目に止まることもある。
そんな中、近年大きく作品数や認知度を伸ばした漫画のジャンルがある。特に女性読者に支持されている「コミックエッセイ」だ。
「コミックエッセイ」という呼称は2000年頃に、メディアファクトリー(現・KADOKAWA)が大々的に使用して浸透したもので、一般的なジャンル名としては「エッセイ漫画」とも呼ばれる。
2010年に『ダーリンは外国人』(メディアファクトリー)、2011年には『ツレがうつになりまして』(幻冬舎)が映画化されたことを挙げると、何となく思い浮かべられる人も多いのではないだろうか。
コミックエッセイは、作者の体験を元にしたノンフィクションが基本だ。しかし現代では「個人を特定されない目的で、脚色としてフィクションを入れる」ことも多々ある。その結果「完全なノンフィクションであるかどうか」は、読者にとってはさほど重要視されていない。
最たる特徴は、線が少ない「ゆるい」画風だ。登場人物の普段の表情はあまり緻密には描かれない。その分、感情の動きがあったときの表情の変化が際立つ。胸中をさらけ出すモノローグとの相乗効果で、ちょっとした違和感や驚き、葛藤などが生き生きと感じられ、つい先を読み進めたくなる。
1話のコマ数も少なく、全話を一気読みしても長くても数十分から1時間程度。描かれるおもなテーマは、恋愛・結婚・家族、人間関係、病気、ペット、グルメなど。起承転結があるものもあれば、淡々と続く日常の出来事を描写するものもある。