絶景に囲まれた「天の逆鉾」の不思議
高千穂峰の山頂に向かうコースは3つあり、比較的手軽とされるコースで所要時間は90分ほど。途中、傾斜の厳しい地形も多く、登山に不慣れな人にはなかなかハードな道程だが、周囲の山々を見下ろすロケーションは絶景だ。

いざ山頂に到達し、「天の逆鉾」を間近で拝んでみれば、神話の時代の遺物としてはさほど古びた感じがせず、拍子抜けするかもしれない。それもそのはず。「天の逆鉾」は度重なる火山の噴火で一度折れてしまい、現在見られる鉾は、数百年前に何者かがあつらえたレプリカなのだという。
折れてしまった鉾の残骸は、しばらく宮崎県都城市の荒立神社の御神体として祀られていたが、それも戦後の混乱で紛失。現在は行方がわからなくなっている。
地中には今も本物の鉾の柄の部分が埋まっているはずで、すぐ間近に神様が使った道具が存在すると思うと、否が応でも気持ちが高まる。まさしく、筆者が日本三奇に求めた刺激とはそういうものだが、もちろん掘り起こしてみるわけにもいかない。
余談だが、龍馬は姉に宛てた手紙の中でこの旅路について触れ、なんと、いたずら心から逆鉾を引き抜いてしまったことを明かしている。なんとも罰当たりな話だが、龍馬の型破りな人物像を思わせるエピソードである。