もちろん、こんな話を無理やりしても、お客様に聞いてはいただけませんが、「自分がなぜ、この仕事をしているのか?」「どんな思いで、仕事に取り組んでいるのか?」といった自己開示を行う一環としてお伝えすると、ほとんどのお客様は真剣に耳を傾けてくださいました。

 そして、お客様の僕に対する接し方がまざまざと変化するのを感じました。
 当時の僕は、朝の9時から夜の9時までは外回りの営業に駆けずり回り、事務処理や提案書の作成などは夜の10時ごろに帰社してから夜中までかけて行うことにしていました。
 そのために、帰宅するのは週末のみ。平日は、毎日寝袋にくるまって会社で寝泊まりする毎日を送っていたのです。その事実を包み隠さずお伝えすれば、それだけで「本当ですか?」「そこまでやる人間がいるんだな?」と誰もが驚きを隠しませんでした。

「捏造」ではなく、「演出」をする

 ちょっとした「演出」もしました。
 例えば、次回のアポイント調整をするときには、手帳の中身をわざとお見せしていました。ぎっしりと予定の書き込まれた手帳をお見せすることで、アポイントを直前に変更するのは僕にとって”酷”であると認識していただくという狙いもありましたが、それ以上に、「こいつは本当に頑張っている」と認識していただきたかったからです。

 あるいは、僕は、夜中にお客様にメールを用意しても、すぐに送るのではなく、わざと寝る直前の深夜2~3時に送ったり、起きてすぐの早朝6~7時に送るようにしていましたが、それも、僕が頑張っている様子を効果的に見せるためでした。

 まぁ、いわば少し”盛った”わけですが、事実の「捏造」ではなく、あくまで事実をベースとした「演出」です(「事実の捏造」は信頼を失うので絶対にやってはなりません)。
 このように自分をよりよく見えるように「演出」することは、「影響力」を生み出すうえで有意義なことだと思いますし、後日、「演出」であったことを伝えたとき(つまり、タネ明かしをしたとき)にも、ほとんどの方から”茶目っ気”の現れとして、好意的に受け止めていただけました。

「本気」は滲み出るように相手に伝わる

 とはいえ、言うまでもありませんが、本質的に重要なのは、本当に「一生懸命に頑張る」ことです。本当に一生懸命かどうかは、結局のところ、滲み出るように相手に伝わっていくのです。

 このことを、近年、僕は実感するようになりました。
 僕のもとには、多くの営業マンから「営業の真髄を教えてほしい」という声が寄せられるようになりましたが、時間は限られているので、そのすべてに応じることはできません。だから、誰と会うかを選ばなければならないわけです。

 そして、ここで最終的に効いてくるのが、相手とのやりとりのなかで滲み出てくる「本気」「一生懸命」です。僕自身、営業マンとして「これ以上は無理」というレベルで頑張りましたから、相手の「本気」「一生懸命」は動物的な感覚として感じとることができます。

 メールのやりとりだったとしても、その文面、言葉の選択、返信のあるタイミングなどから、必ず伝わってくるものがあります。電話で話すことができれば、その声音や抑揚から、多くの情報を得ることができます。そこに宿る「本気」「一生懸命」にリアリティが感じられたときに、はじめて「会おう」という意思決定ができるのです。

 僕が駆け出しの営業マンだった頃の、お客様も同じような感覚だったのではないかと思います。
 つまり、僕が、「毎日寝袋にくるまって会社で寝泊まりしている」ことなどを伝えたこと以上に、僕とのやりとりのなかで滲み出る「本気」を感じ取ってくださったからこそ、僕を応援してくださった。そして、僕から保険に入ってくださったり、知人をご紹介してくださったりしたのだと思うのです。

「頑張る人」は絶対に、
「頑張る人」を応援してくれる

 これは、お客様に限ったことではありません。
 上司や同僚などあらゆる人間関係においても同じこと。ゼロから「影響力」を生み出すためには、とにかく一生懸命に頑張ることが大切です。どんなに鈍臭くても、本気で頑張る人には、多くの人が力を貸してくれます。そして、多くの人々のサポートを得られるからこそ、「結果」が格段に出やすくなるのです。

 もちろん、いつの世にも、「頑張る」ことを冷笑する人がいるのも事実。僕も、これまでどれだけ冷笑されたかわかりません。それに、頑張ったからといって、必ずしも応援してもらえるわけでもありません。必死の努力が無駄に終わることは、普通にあることなのです。

 だけど、これだけは覚えておいてほしいと思います。
「頑張っている人」は、絶対に「頑張っている人」を応援してくれます。

 そして、この世で成功している人は、絶対に「頑張っている人」です。つまり、本気で頑張っていれば、いつか必ず、「成功者」に見出してもらえるということ。そして、「成功者」の応援を受けて、あなたも「成功」に向けて追い風を受けるようになるのです。

 ただし、「成功者」は100%本気で頑張ってきた人ですから、その目を誤魔化すことはできません。あなたが「一生懸命に頑張る振り」をしているだけであれば、それを簡単に見破ってしまうでしょう。だから、とにかく嘘偽りなく「本気」になること。これが、僕たちが「成功」へと近づく大原則なのです(詳しくは、『影響力の魔法』に書いてありますので、ぜひお読みください)。