その1:ベストセラーや、誰かのおすすめ本を
他人とともに読む(Attractive,Social)

 読書に身が入らない人に勧めたい方法が、ベストセラーや知人におすすめされた書籍など、自分が「確実に役立つ」「間違いなく面白い」と思える本を、他人と一緒に読むことだ。

 読書に集中できない要因の一つは、「今読んでいる本が本当に自分の役に立つのか?」という疑問である。人間は得よりも損失に着目する傾向があるため、「読書によって時間を無駄にするかもしれない」と考えた場合、読書へのやる気が失われやすくなる。

「得よりも損失に着目する傾向(損失回避性)」が人の行動に多大な影響を与えている事実は、数多くの研究で証明されている。1991年に行われた実験では、自分に与えられたマグカップを手放す、つまり失うときの痛みは、マグカップを新たに入手するときの喜びの約2倍であることが証明されている(リチャード・セイラー,キャス・サンスティーン『実践行動経済学』)。

 しかし、他人によって面白さや得られる利益を保証された書籍であれば、読書によって時間やお金を無駄にする不安が軽減され、フレームワークのAttractive要素によって、読書に取り組みやすくなる。

 また、より確実に本を読むためには、“他人とともに読む”ことも重要だ。例えば、読書系のSNSやオンラインサロンで知り合った人と同タイミングで同じ本を読んだり、知り合いとともに「今月中にこの本を読む」と決めて読んだり、読書会に参加したりすることで、Social要素が加わり、読書へのやる気が向上する。

その2:スマホの電源を切り
本を“すぐに取り出せる”位置に置く(Easy)

「本を読みたいが、ついついスマホを触ってしまう」人に有効なのが、本を手に取りやすい位置に置き、開くまでの手間を最小限にする方法だ。

 これは、EASTのフレームワークのうち、Easy要素に重きを置いた方法である。読書においては、本を開くことを簡単にするために、本をベッドサイドやリビングテーブルなどの手に取りやすいところに置くのがよいだろう。

 海外でEasyを取り入れた事例としては、肥満対策のために「スーパーのレジ横の食べ物をヘルシーにする」「専用サイトを提供し、自転車や徒歩での移動ルートを調べるのを容易にする」といった活動が挙げられる。

 読書の場合はさらに、Easyの思考法を応用して、読書を妨げる大きな要因であるスマートフォンを遠ざけ、使うのを難しくすれば、読書に取り組む時間はさらに伸ばしやすくなると考えられる。例えば、戸棚の中に入れる、普段の生活空間とは異なる場に置く、電源を切るなどの工夫をすることで、スマートフォンの誘惑を断ち切りやすくなるだろう。