スタジオジブリが、日テレの傘下に入る。ジブリの最新作『君たちはどう生きるか』は7年もの歳月をかけて完成させたという。今後の注目点は、ジブリが今までと同じような作品を生み出し続けられるかに尽きるだろう。日テレとジブリは、職人集団と経済合理性が求められる組織という、ある種の矛盾にぶち当たる。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
スタジオジブリが日テレ傘下に
今後もヒット作を生み出し続けられるか
9月21日、スタジオジブリは、日本テレビ放送網株式会社(日テレ)の傘下に入ると発表した。主たる目的は、経営の安定のためとみられる。これまでジブリは、宮﨑駿監督や故高畑勲監督の徹底した作画へのこだわり、見る人の心を取り込む作画の職人技によって、『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』など数々のヒット映画を送り出してきた。
しかし、ヒット作品を生み出しても、十分な収益を得ることは難しかったようだ。それだけ、思ったような映画作品を作るには時間とお金がかかるということだろう。また、後継者問題も浮上した。ジブリによると、宮崎監督の長男、宮崎吾朗氏が後継者候補に挙がったこともあったが、吾朗氏は固辞したという。ジブリの将来を背負うことは大変なのだろう。
後継者の問題は、ジブリだけの課題ではない。わが国の中小企業の多くに共通する。解決のために大企業に身売りをする中小企業もある。一般的な企業なら身売り後に着実に利益を上げられればそれでよいのだが、ジブリは個性的なアニメを生み出す職人の集団だ。そのジブリが大企業である日テレ傘下で、人々を魅了する作品を生み出し続けられるか否かが問われる。