しなやかな血管が
健康維持につながる理由
人間の体は、走ったり物を投げたりするような「大きな動き」を繰り返せる構造になっています。しかし生活が便利になるにつれ「大きな動き」は必要なくなり、さらにIT化やテレワークの浸透によって体を動かすこと自体が激減しました。この変化が私たちの体を蝕んでいるのです。体を動かさないと血流を上げる機会が減り、余った糖や脂質が血中に残って血管という体のインフラが傷みます。生活習慣病の多くは血管が硬くもろくなることで起き、その行き着く先が心疾患や脳血管疾患、腎不全などによる突然死です。
エクササイズで「大きな動き」を実現するには、大きな関節である(1)肩甲骨を含む「肩関節」、(2)背骨で構成される「椎間関節」、(3)骨盤と大腿骨の「股関節」をよく動かす構成が必要となります。
普段よく使う手先・足先より肩甲骨・脊柱・股関節を動かしたほうが、血液を押し流す筋肉のポンプ作用は圧倒的に効率よく働くからです。こうして血流がよくなり、糖や脂質の消費が増えれば、血管はしなやかになって健康維持に大いに役立ちます。
循環系ストレッチのもう一つの狙いは、血管の集まる部位を動かすことです。心臓から抽出された血液は、まず太い血管(動脈)を大量に流れ、そこから枝分かれして、体の末梢まで少しずつ血液を届けてくれる毛細血管へと広がっていきます。動脈は、道にたとえると幹線道路です。車線も行き交う車も多い幹線道路が渋滞すると、枝分かれする小路に入る車も減ります。血管も同じで、大きな動脈の流れが滞ると毛細血管への流れも滞り、結果、全身の血流が低下するわけです。
循環系ストレッチでは、この低下した血流を復活させるために、幹線道路となる動脈が集まる部位に注目しました。首の付け根、肩まわり、わきの下や胸の前、そけい部などは大きな動脈の通り道で、多くの血管が集まります。そこを積極的に動かすと血管まわりの筋肉がほぐれ、滞っていた血液を押し流してくれるのです。ゲートが開いたかのように動脈の流れがよくなると、枝分かれした毛細血管にも血液がしっかり届きます。そうすると毛細血管は網目状にどんどん広がり、体のすみずみまで血液が巡るようになるのです。