ストレッチをする女性写真はイメージです Photo:PIXTA

多くの中高年が悩んでいる高血圧、高血糖、動脈硬化は、悪化すると重篤な疾患を招くと言われる。改善するには運動が必要なことはわかっていても、なかなか実行に移せない……。そんな悩みを抱えた人々のために、日本屈指のフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏が考案したのが「循環系ストレッチ」。毎日10分のストレッチを習慣化すると、血管周りの筋肉がほぐれて滞っていた血行をよくしてくれるという。本稿は、中野ジェームズ修一 著、田畑尚吾 監修『血管を強くする 循環系ストレッチ』(サンマーク出版)の一部を抜粋・編集したものです。

多くの人々が切望する
“短時間で効く運動”

 私が30年以上携わっているフィジカルトレーナーという仕事の内容は多岐にわたりますが、それはクライアントさんの希望に合わせて、今の体をよりよい状態へと導いているからです。私たちが運営するパーソナルジムには10代の学生から、主婦、ビジネスパーソン、トップアスリート、そして余生を楽しむ方と、さまざまな方が訪れます。ジムに通うイコール運動好きというイメージがあるかもしれませんが、じつはそういう方はひと握りです。「やせたい」「健康になりたい」「運動不足だから何とかしたい」、だけど「自分では続けられない」と悩む人が、とても多いのです。

 私事ですが、私の母も「何をすれば体がよくなるのかしら」と、しょっちゅう訊ねてきます。「腰が痛い」「ひざが痛い」「ふくらはぎがつる」など、頻発する「ちょっとした痛みや不調」を訴えてくるので、私もあれをやればこれをやってみればと都度、最適なものを提案してきました。ところが「時間がない」「簡単にできるものがいい」と、さらなる注文を突きつけてきます。せめて歩くくらいはしてほしいのですが、車社会の田舎暮らし。やはり「面倒よ」「忙しい」と言って、車でピュッと移動するという調子です。

「とにかく、短時間でいちばん効くものを知りたい」

 これは母だけでなく、クライアントさんやメディアからも最も多く受ける要望です。私のところに相談や取材に来る方は誰しも、運動が体にいいことはわかっているし、自分に必要ということも理解しています。でも慣れない運動をたくさんこなすのはしんどいし、おっくうに感じてしまう。「やる気はあっても時間がない」という人も多いでしょう。

 もちろんトレーナーとしては、ストレッチも筋力トレーニングも全部やって体をよくしてほしいのですが、すべてをこなそうとするとかなり時間がかかります。しかも一度や二度、たくさん運動をしたり、いい食事をしたりするだけでは体は変わりません。習慣化が必要です。となると運動するという一歩を踏み出せない、運動習慣が続かない人は、完璧な運動メニューよりも、短時間でもコツコツ続けられる運動のほうが間違いなく効果があります。

「とにかく短時間でいちばん効くものを知りたい」という声は、運動をしたくても続けられない人の切なる願いです。それを真摯に受け止めて生まれたのが『循環系ストレッチ』です。「循環系」とは、血液をよく巡らせることを意味します。このストレッチは、関節をダイナミックに動かす「動的ストレッチ」です。循環系ストレッチはさらに、動かす順番や部位を工夫することで自動的に、座りすぎや動かなすぎで滞った血液を短時間で全身くまなく巡らせる構成にしました。

 じつは血液の80%は、筋肉を動かすことでしかうまく流れない静脈と毛細血管にあります。だから血流を促すことはとても重要で、血流が滞りがちな現代人の体に多くのポジティブな変化をもたらす可能性を秘めているのです。それを証明するために、田畑尚吾医師のクリニックで循環系ストレッチを40代~60代の患者さんに行っていただき変化をモニタリングしました。

 その結果、何らかの病気や体調不良を抱える方の「弱っている」部分によい影響を及ぼしている可能性が、数値にもしっかりとあらわれています。なかには、私が想定していた以上の結果が出た項目もあり、驚きとともに、たいへんうれしく感じました。循環系ストレッチは1回10分ほどでできます。また、年齢や体力に合わせて強度を調節できるので、30代でも80代でも、体に痛みのある人も実践可能。病気になれば医師が薬を処方するように、私たちフィジカルトレーナーはその人にとっての最適な運動を処方するプロです。その運動のプロが自信を持って提案する、この循環系ストレッチ。健康を維持したい、日々の生活を快適に送りたいという方、ぜひお試しください。

無理なく伸ばして
血液の巡りをよくする

 ストレッチと聞くと「無理に伸ばされるのがキツい」「拷問だ!」などと思う方もいらっしゃるかもしれません。それは、おそらく反動を使わずに筋肉をじっくり伸ばす「静的ストレッチ」だと思います。

 ご安心ください。『循環系ストレッチ』は、硬くなった筋肉を無理に引っ張るようなことはしません。少しずつ体の動きを大きくすることで、普段あまり可動していない筋肉や関節まで、無理なく効率的に動かしていくエクササイズです。動きながら、体が勝手に伸びて柔軟性が上がるストレッチ、とお考えください。循環系ストレッチの特徴は、血液の巡りがよくなって体がしっかり温まる点にあります。温度が上がると筋肉を覆う筋膜の抵抗性もどんどん下がり、どんなに体の硬い人でも、自然に大きくスムーズに動けるようになっていきます。動作の順番にも工夫を凝らし、体の硬い人も最短で全身の血流を促せる構成にしました。

 本稿で紹介するのは肩と肩甲骨まわりの血流をよくする「ぬぎストレッチ」のみですが、ほかにも体幹の動きを取り戻して血流をアップする「のびストレッチ」、全身の動きを連携させて血流をアップする「ふりストレッチ」と、合計3つの循環系ストレッチがあります。効果の最大化を狙うなら、3つすべてのストレッチを行うのがベストです。