じつは血液の80%は、筋肉を動かすことでしかうまく流れない静脈と毛細血管にあります。だから血流を促すことはとても重要で、血流が滞りがちな現代人の体に多くのポジティブな変化をもたらす可能性を秘めているのです。それを証明するために、田畑尚吾医師のクリニックで循環系ストレッチを40代~60代の患者さんに行っていただき変化をモニタリングしました。

 その結果、何らかの病気や体調不良を抱える方の「弱っている」部分によい影響を及ぼしている可能性が、数値にもしっかりとあらわれています。なかには、私が想定していた以上の結果が出た項目もあり、驚きとともに、たいへんうれしく感じました。循環系ストレッチは1回10分ほどでできます。また、年齢や体力に合わせて強度を調節できるので、30代でも80代でも、体に痛みのある人も実践可能。病気になれば医師が薬を処方するように、私たちフィジカルトレーナーはその人にとっての最適な運動を処方するプロです。その運動のプロが自信を持って提案する、この循環系ストレッチ。健康を維持したい、日々の生活を快適に送りたいという方、ぜひお試しください。

無理なく伸ばして
血液の巡りをよくする

 ストレッチと聞くと「無理に伸ばされるのがキツい」「拷問だ!」などと思う方もいらっしゃるかもしれません。それは、おそらく反動を使わずに筋肉をじっくり伸ばす「静的ストレッチ」だと思います。

 ご安心ください。『循環系ストレッチ』は、硬くなった筋肉を無理に引っ張るようなことはしません。少しずつ体の動きを大きくすることで、普段あまり可動していない筋肉や関節まで、無理なく効率的に動かしていくエクササイズです。動きながら、体が勝手に伸びて柔軟性が上がるストレッチ、とお考えください。循環系ストレッチの特徴は、血液の巡りがよくなって体がしっかり温まる点にあります。温度が上がると筋肉を覆う筋膜の抵抗性もどんどん下がり、どんなに体の硬い人でも、自然に大きくスムーズに動けるようになっていきます。動作の順番にも工夫を凝らし、体の硬い人も最短で全身の血流を促せる構成にしました。

 本稿で紹介するのは肩と肩甲骨まわりの血流をよくする「ぬぎストレッチ」のみですが、ほかにも体幹の動きを取り戻して血流をアップする「のびストレッチ」、全身の動きを連携させて血流をアップする「ふりストレッチ」と、合計3つの循環系ストレッチがあります。効果の最大化を狙うなら、3つすべてのストレッチを行うのがベストです。