長期低迷していた日本の銀行株の上昇が顕著だ。東証株価指数(TOPIX)は今年初来25.3%上昇しているが、銀行業を対象とする「TOPIX銀行業株価指数」は年初来37.9%も上昇している。また三菱UFJの株価は同46.8%の上昇だ(いずれも9月28日時点)。
すでに報道されている通り、こうした銀行株価の上昇の背景には、インフレ率の底上げでいよいよ日銀の超金融緩和が終了し、金利上昇に伴って銀行の利ザヤ(運用金利と調達金利の格差)が回復するという予想が働いている。
今回は日銀の金融政策の変更を見据えながら、銀行株がまだ上がるのか、目先1~2年でどこまで上がりそうか、ざっくりとしためどを立ててみよう。結論を言うと、短期政策金利がゼロ近傍のまま、10年物国債利回りが1%を少し超える辺りまでの長短金利格差拡大とそれによる銀行の自己資本利益率(ROE)向上を、すでに今の銀行株価は織り込んでいるようだ。
さらに10年物国債利回りが1.5%程度になるなら、追加で10~16%程度の上昇が見込める。その上で銀行のROEが8%を超える場合には、現在水準から50%程度の大上振れシナリオの可能性も出てくるだろう。
物価上昇率ではなく金利動向に反応する銀行株
まず今年掲載した下記の2つの論考で語った通り、「日本のインフレ率の底上げ→企業部門の自己資本利益率(ROE)の上昇→株価上昇」という中期的な見通し通り状況は展開しているようだ。筆者はその確信をますます深めている。米国の金利高が長引くとの予想の修正で、足元では日本株も反落しているが、中長期的な上昇トレンドに変更はないだろう。
その2つの論考:「脱デフレ時代、ROEの向上で日本株上昇トレンドが始まる」(2023年4月17日掲載)、「日経平均は来年4万円超え視野、インフレ率の底上げで株高トレンド継続へ」(2023年6月22日掲載)。
ただし上記の論考では銀行部門についてあえて語らなかった。その理由の1つは、使用した財務省法人企業統計のデータは、全産業(銀行・保険を除く)と銀行・保険に分かれており、しかも銀行・保険についてはデータが2008年までしか遡及できないという技術的な事情があったからだ。