昭和の香りが漂う「回転売買」が、令和の時代に新しく始まる新NISAでも話題になっている。回転売買をやりたい金融機関側と、中途半端な検査・指導を仕事としたい行政側の、半ば「共犯関係」に近い非生産的な関係が再現されそうだ。(経済評論家 山崎 元)
「回転売買」に昭和の香り
昔はできる証券営業マンの証し
「回転売買」という言葉には昭和の香りがする。
少なくとも近年の証券用語ではない。古い証券マンならそう感じるのではないだろうか。筆者が証券市場に関わったのは日本の株価にバブルが形成されようとしていた1980年代半ばからだが、その頃から既にこの言葉はあった。
回転売買とは、顧客に保有商品を売らせて、その代金で別の商品を買わせることだ。かつての証券セールスマンにとっては、「顧客から手数料をたくさん取るのでいくらか悪いことだが、幾分誇らしいこと」のようなニュアンスが伴う言葉だった。なぜなら、顧客は既保有の商品が値上がりして利食いの状態なら言うことを聞いてくれやすいが、値下がりして含み損がある状態では回転に応じにくいからだ。
回転売買で数字をつくれる営業マンは社内で「できる営業マン」の顔ができた。
「客がもうけたら俺の腕! 損をしたときは運のせい」というのが当時の証券マンに多く見られた態度だが、振り返って考えてみると、ファンドマネージャーもそうだし、人間全般に見られる傾向だろう。