お金持ちより時間持ちに

 生活するための最低限の「お金」はあった方がいいが、筆者はそれ以上は欲せず、常に「時間」を求めてきた。だから、「お金をつくる方法」は教えられないが、「時間をつくる方法」なら詳しく伝授できる。

 お金は生まれつき貧富の差があって不平等だが、時間は全ての人に平等に1日24時間ずつ与えられている。さらに、お金は増えたり減ったりするが、時間が増減することはない。

 だから自然に、「危ういお金よりも、確かな時間の方が信頼できる」と考えるようになった。

 それでも小学生の頃、マンガのように「時間を止める魔法」を使い、自分の時間を増やせないかと夢見たこともあったが(笑)、当然それは叶わない。

 あの頃は、夕暮れに友達がみんな帰って一人になっても真っ暗になるまで外で遊び、帰宅後も勉強せず「WANT TO DO」に夢中だった。それでも時間は足りない。とはいえ当時は睡眠を削るなんて発想はない。

 大学生になって、睡眠を削って「WANT TO DO」に費やしたこともあるが、翌日のパフォーマンスが悪すぎて何度も痛い目に遭う。その経験から、「睡眠カットは、むしろ大切な時間を無駄にする行為でしかない」と学ぶ。

「健康オタク」という呼び名に、「ガジェットオタク」が加わった

 時短研究がはじまったのは、その後から。

 勉強ギライなのに効率化や仕事術の本を読み漁り、その鍵はタイムマネジメントとタスク管理、そして大胆な手放し術にあると知る。これら一般教養を習得し、日々の行動に落とし込んではブラッシュアップしてきた。

 だが社会人3年目で、どうしても越えられない壁に直面する。ちょうどその頃、個人向けのデジタルテクノロジーがハイスペック化してきた。

「この新しいテクノロジーをマスターすれば、ある種の魔法使いになれるかもしれない」と興奮し、必死になってデジタルハックスを勉強するようになる。

「健康オタク」という呼び名に、「ガジェットオタク」が加わったのはその頃から。ただ筆者にとって、健康やガジェットはただの手段であり、目的はあくまで時短にあった。

「オーガニックデバイス」に次ぐ有益な投資先だと考え、「デジタルデバイス」にもお金と時間を惜しまず投入。常に最新機器を入手して活用法を徹底的に学んだ。

 デジタルデバイスの能力を最大限に引き出して、あらゆる作業を効率化。そうやって飛躍的な時短が実現すると、30代でいよいよ仕事でいい結果が出るようになっていく。

 おもしろいことに──成果が出れば出るほど、仕事と遊びの両方で、「WANT TO DO」が心の奥から湧いてくる。どれも途方に暮れるほど難しいが、ワクワクするものばかり。

 なんとしても挑戦したいと思った。そのためにはもっと作業効率を高めてより多くの時間を捻出し、それに投資しないといけない。

 それを実現する鍵は、脳と体の働きにあると気付き、意識がさらに自身の「オーガニックデバイス」に向くようになる。

 すると自然に、連載でも紹介した母の「5つの教え~ちゃんと食べて、ちゃんと体を動かし、ちゃんと休み、ちゃんと寝て、思いっきり遊ぶ!」を、より徹底するようになっていく。現代社会においては生活習慣病が死因の大多数を占めることを知ったのも、ちょうどその頃だった。

 定期的なエクササイズによって、全身の筋肉バランスが改善して、体脂肪率はアスリート並みになる。体は軽くなって、肩こりや肉体疲労はゼロに。脳疲労やストレスといったビジネスパーソン特有の症状も激減していく。

オーガニックデバイス×デジタルデバイスの奇跡

 そうやって30代半ばとなり、生活習慣が確立して暮らしが整うと、際立った集中力と創造性を発揮できるようになった。決断力や問題解決能力も高まっていく。その結果、これまでとは比較にならないほど速く──しかもより高いクオリティで──仕事を完遂できるようになった。

 奇跡だと思った。

 まるで、与えられた1日の時間が増えたかのような感覚。この時、自分の中で時間に対する意識革命が起きる。時間とは、与えられるものではなく「自分で創り出すもの」だと。

 そう、「デジタルデバイス×オーガニックデバイス」の組み合わせこそが魔法だったのである。業務によっては5~10倍という超時短が実現するようになった。

 すると苦しかった仕事がどんどんおもしろくなり、遊びのスキルは目に見えて高まっていく。臆せず次々と新たなチャレンジができるようになる。

 音楽の仕事で連続ヒットを出せるようになり、大好きで続けていたフライフィッシングや登山ではメーカーからサポートを受けるようになった──それはまるで、人生がバージョンアップしていくような感覚──。

「この感動を1人でも多くの方に味わってほしい」

 本連載にはそんな想いが詰まっている。その気持ちを改めて伝えておきたいと思う。

(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)

(※1)【超ミニマル・ライフ3原則】
①体・脳・心の負担を最小化して「パフォーマンス」を最大化する
②仕事と家事を超時短して「自由時間」を最大化する
③お金・仕事・人間関係の不安をなくして「幸福度」を最大化する