漫画『キングダム』は起業家の教科書!“秦の始皇帝”が中華統一の夢を仲間と共有できた秘訣(c)原泰久/集英社

累計発行部数が8700万部を超えた大人気漫画『キングダム』。同作品が今、日本の起業家たちに注目されているという。物語を読み解いていくと、今の時代に求められる理想のリーダー像が浮かび上がってくるからだ。それはいったい、どんな姿なのか。ダイヤモンド・オンラインが配信している「学びの動画」の特集『入山章栄の世界標準の経営理論』(全30回)では、経営学者の入山氏が視聴者に薦めたい「名著(漫画含む)」を厳選。経営学と絡めながら解説している。今回は、その「キングダム編」から、骨子を書き起こした記事を特別公開する(元の動画はこちら)。

信と政の時代と同じく
ビジネス界も「戦国時代」

『キングダム』(原泰久/集英社)とは、中国の春秋戦国時代を舞台に、奴隷の身分から大将軍を目指す「信(しん)」と、中華統一を目指す「政(せい)」の2人を主人公にした歴史バトル漫画だ。戦乱の世の中でいくつもの国が勃興し、数々の魅力的な武将が登場して戦闘を繰り広げていくのが魅力の同作だが、なぜこれほど人気なのだろうか。

 確かに、日本人は昔から歴史ものが大好きだ。毎年NHKでは大河ドラマが放送され、他局でも戦国時代や幕末などを舞台にした時代劇が今も制作され続けている。取り上げられる時代は日本だけでなく、中国の「三国志時代」など多岐にわたり、昔から数多くの名作が生まれてきた。だが昨今は、同じ時代や登場人物の作品で飽和状態だったともいえる。

 そんな数ある歴史ものの中で、あまり取り上げられてこなかったのが『キングダム』の舞台である春秋戦国時代だ。紀元前770年から500年以上にわたって「秦」「楚」「斉」「燕」「趙」「魏」「韓」の7国が覇権を争い、天下統一を目指す――。

 いかにも日本人が好きそうなストーリーだが、対立の構図が複雑であるせいか、この時代を克明に描いた人気漫画は出てこなかった。『キングダム』は、その今まで日の当たらなかった時代にスポットライトを当て、面白みを提示したことが、人気の要因の一つといえるだろう。

 ではなぜ、同作品は起業家に注目されているのだろうか。そのポイントとなるのが、ビジネスの世界も「戦国時代」であることだ。

「起業家の世界は、バリバリの戦国時代。ありとあらゆる起業家が出てきて新しいビジネスやイノベーションを起こそうとしている」(経営学者・入山章栄氏)。つまり、戦国時代の歴史もので様々な武将のキャラクターが登場して戦うように、武将のような起業家が出現して戦っているわけだ。

 そうなると、起業家たちは次第に、自分自身を戦国武将になぞらえるようになる。「戦国時代とは圧倒的に変化が激しく、今後どのようになるかわからない、先の見えない時代。今のビジネスも先が見えない時代であり、(戦国時代と)重ね合わせるからこそ、キングダムは高く評価されているのだろうと思っている」と入山氏は推測する。