「国家統一」と「ビジネス」の
親和性が高いわけ

 これはまさに、民間企業でも同じだ。例えば、創業期のベンチャー企業や一般企業の新規事業などで、お金がもうかるといった目先のことよりも、『自分たちはこんな未来を作りたい』とリーダーが目標を掲げる。すると最初は半信半疑だったような周囲も、仲間をかき集め、その仲間がビジョンに共感していく。『リーダーが言っているビジョンは確かにその通りだ。この人を助けて一緒にやっていこう』となるわけだ。

 そうやってどんどん仲間が増えていき、結果的に普通では成し得なかったことが成し得るようになる。これを入山氏は「セルフ・フルフィリング(自己成就)」と述べているが、部下たちがリーダーの思想に共感することで仲間が増え、結果的に事前に無理だと思っていたことが実現できるようになるのだ。ビジネスでの誰もが成し得なかったことを成すという考え方は、実は非常に国家統一と親和性が高いのだ。

「まさに、みんなが思い込むことで自己成就をしたからこそ、歴史的にも徐々に中華が統一されていったのではないか」と入山氏は推察する。つまり、政の持つトランスフォーメーショナル・リーダーシップとセンスメイキングが、ゆくゆくは国家を統一するという巨大なイノベーションにつながったというわけだ。

 いかがだっただろうか。「学びの動画」の特集『入山章栄の世界標準の経営理論』では、これら2つの理論の詳細をはじめ、キングダムと企業経営の共通点を余すところなく解説している。ご興味のある方は、ぜひチェックしていただきたい。