新型コロナウイルス禍がかなりの落ち着きを見せ、社会は少しずつ元通りになりつつある。だが、円安、資源・原材料の高騰、半導体不足といった問題はいまだに解消されていない。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はセブン&アイ・ホールディングスやイオンなどの「コンビニ/スーパーマーケット」業界4社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
セブン&アイが1Q決算で増収も
利益面が「意外な理由」で大幅ダウン
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のコンビニ/スーパーマーケット業界4社。対象期間は2023年2~6月の直近四半期(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスは23年4~6月期、その他3社は23年3~5月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・セブン&アイ・ホールディングス
増収率:8.3%(四半期の営業収益2兆6507億円)
・ローソン
増収率:11.9%(四半期の営業総収入2641億円)
・イオン
増収率:5.5%(四半期の営業収益2兆3248億円)
・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(ドン・キホーテなど)
増収率:4.1%(四半期の売上高4796億円)
コンビニ/スーパーマーケット業界の4社は、いずれも増収で着地した。
このうちセブン&アイ・ホールディングス(HD)は、傘下の百貨店大手「そごう・西武」を9月1日付で米投資ファンドに売却した。この取引に当たっては、雇用維持や事業継続への懸念からそごう・西武の労働組合が反発し、従業員が異例のストライキを決行したことが話題を呼んだ。
また、22年11月に売却を発表した当初、セブン&アイ・HDはそごう・西武の企業価値を2500億円と見積もっていた。だが、売却時点での企業価値の見積もりは2200億円となり、さらに売却額の見通しは8500万円だと公表している。有利子負債などが差し引かれた結果、企業価値と比べるとタダ同然の売却額となってしまった。
米投資ファンドへの売却を巡って、さまざまな問題が発生したそごう・西武。今回分析対象とした23年3~5月期において、同社はまだセブン&アイ・HDの傘下だった。ただ、セブン&アイ・HDは23年度から報告セグメントを変更し、そごう・西武を含む「百貨店・専門店事業」を「その他の事業」に組み込んだ。
その結果、不動産事業などとの合算値がセグメント業績として開示されるようになり、従来のように「百貨店・専門店事業」単体の動向を詳細に把握することはできなくなった。
ここで気になるのは、そごう・西武事業を含むようになった「その他の事業」の23年3~5月期のセグメント利益が前年同期比約87%増と大幅なプラスであることだ。
一方で、セブン&アイ・HDにおける全社の営業利益は前年同期比約20%減、純利益は同約35%減となっている。すなわち、セブン&アイ・HDの傘下(当時)で不振なのはそごう・西武だけではなく、減益に沈んでいる事業が他にあるということだ。
そしてその正体は、意外な事業だった。次ページでは、各社の増収率の時系列推移を紹介するとともに、セブン&アイ・HDの減益要因について詳しく解説する。