「ROIC経営」を実現させるための
2つの取り組み

 オムロンのROIC経営は、「ROIC逆ツリー展開」と「ポートフォリオマネジメント」という大きく2つの取り組みで成り立っている(図表2)。

図表2 オムロンのROIC逆ツリー図表2 オムロンのROIC逆ツリー

ROIC経営実現のための取り組み1
ROIC逆ツリー展開

 オムロンによれば、ROICが部門レベルのKPIに向かってトップダウンで設定されるのではなく、現場レベルのKPIからのボトムアップによってこそ、ROIC経営が実現すること、すなわち逆ツリーであることが重要であるという。

 ROICの計算式は各社オリジナルでかつ複雑な場合も多い。ROICを売上高利益率と投下資本回転率に分解しただけでは、一人一人の社員までROIC経営を浸透させ、具体的なアクションに導くことは容易でない。見せ方によっては、本部から押し付けられた難解な経営指標と受け取られてしまう。

 ROICを逆ツリーで示すことによって、各事業の構造・課題に応じた、ROIC改善の強化項目(ドライバー)とそれらを強化・改善するためのアクション、KPIの設定が起点であることが明確になる。

 オムロンの逆ツリーにあるような、注力業界/商品売上、自動化率(省人数)や不動在庫額と言われれば、現場の社員一人一人が誇りと気概を持って取り組むことのできる現場の経営指標であろう。オムロンのROIC逆ツリーへの取り組みは、経営戦略部門や財務部門の数字合わせではなく、現場レベルの愚直なPDCA活動によってこそ、ROIC経営が実現できることを示している