弁護士資格を持つテレ朝社員は
「プライバシー権の侵害」を確信した

「このツイートはプライバシー権を侵害する違法行為だ」と、西脇は確信した。もともと、東大法学部在学中に司法試験に合格、司法修習を修了した後、法律事務所への内定を辞退してテレビアナウンサーを志し、テレビ朝日へと進んだという異色の経歴の持ち主だ。「ニュースステーション」「やじうまプラス」など12年間のテレビアナウンサー経験を経て、総務局法務部へ異動した(2023年現在は法務部長)。

 メディア人として、法律家として、近年のインターネットや表現の場で顕著な、事実関係に繊細であるべき社会問題に対してすらスピードやインパクト重視で、「面白いことをいかに早く言えるか」「ウケた者勝ち」「目立ったもの勝ち」という、大喜利のような風潮に一矢報いたいという考えもあった。

 周囲には「物事を突き詰めて考えすぎではないか」と心配する声や、「自分で自分の弁護はすべきではない」との忠告もあったが、丁重に礼を言って断った。テレ朝の社員が、自社の看板番組の準レギュラーであった人気コメンテーターを訴えることの責任を、きちんと自分で取りたいと考えたからだ。

 プライバシー侵害と名誉毀損を理由として、慰謝料300万円と謝罪広告を求めるという内容、しかも自分で自分を弁護する「本人訴訟」という特殊な形で、西脇は三浦瑠麗氏を提訴した。

三浦瑠麗氏を訴えた裁判の事件記録などの書類三浦瑠麗氏を訴えた裁判の事件記録などの書類。裁判に使用した書類は、分厚い保存用ファイル3冊分にも及ぶ Photo:Diamond