「ステマ(ステルスマーケティング)」を景品表示法の禁止行為として規制する、通称「ステマ規制」が10月1日から始まった。前回『「SNSに投稿で一品サービス」が法律違反に!10月1日開始“ステマ規制”の重要点を解説』では、一般の消費者が注意すべき点について専門家の意見を聞いて紹介した。本記事では、Webメディアや雑誌・新聞などの商用媒体に関わる企業や人、インフルエンサー、ブロガー、アフィリエイターがどんな点に注意すべきなのかに重点を置いて解説する。
景表法違反になるかどうかを判断するには、大きく二つの基準がある。そしてもう一つ、今回のステマ規制で注意してほしいのは、「2023年9月30日以前、施行前にネットに掲載された記事やSNS投稿であっても、規制の対象になる」という点だ。(ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 鈴木朋子)
「ステマ規制」とは景品表示法の改正のこと
メディアは対象外だが事業者が処罰の対象になる
2023年10月1日に施行された「ステマ規制」は、Webメディアや雑誌・新聞などの商用媒体に関わる者にとっても関心が高い法律だ。規制の対象になる表示をしてしまうと、取材先の事業者や広告主に責任が生じ、さらに読者からメディアとしての信用を失うかもしれない。
9月26日、日本雑誌協会と日本雑誌広告協会は「10月1日の施行直前!~消費者庁の『ステマ規制』とその対策~」と題したセミナーを開催した。講師は、博報堂ビジネスコンプライアンス局クリエイティブリスクコンプライアンスグループ GMで、一般社団法人クチコミマーケティング協会(WOMJ)運営委員会副委員長も務める山本京輔氏。本記事は、セミナーの内容に加え、個別に山本氏から伺った話をお伝えする。
「ステマ」とは、企業が商品やサービスを宣伝する際に、広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す行為を指す。例えばメディアの場合、メーカーから金銭やサービス、商品の提供を受けたにもかかわらず、その件を表示せずに通常の編集記事として商品やサービスをおすすめするといったケースが典型例だ(詳しくは記事後半で解説)。記事を読んだ消費者が、適切に商品やサービスを選べなくなってしまう。
こうした事態を防ぐため、消費者庁は景品表示法(景表法)が不当な表示とする「優良誤認表示」(第5条第1号)、「有利誤認表示」(第5条第2号)、「その他、誤認されるおそれのある表示」(第5条第3号)の中から、「その他、誤認されるおそれのある表示」を改正した。
「その他、誤認されるおそれのある表示」では、「無果汁の清涼飲料水等についての表示」「商品の原産国に関する不当な表示」「消費者信用の融資費用に関する不当な表示」「不動産のおとり広告に関する表示」「おとり広告に関する表示」「有料老人ホームに関する表示」が規制対象となっている。今回、ステマ規制として「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年3月28日内閣府告示第19号)が追加された。
景表法違反をすると、排除措置命令として違反行為の差し止めや再発防止策の実施などが事業者に科せられる。ただし、「その他、誤認されるおそれのある表示」は5条3号であるため、5条1号や5条2号の行政処分「課徴金納付命令」は科せられない。
「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」とは、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」を指す。非常に分かりづらいが、山本氏は前半を「事業者の表示」、後半を「(事業者の表示であると)判別が困難」と読み解く。