発言の中身よりも“雰囲気”重視
有名女性文化人スターが誕生し、政治的に重用される怖さ
「これは、テレビメディアの責任でもあったのだろうな、と」。西脇は口元を引き締めた。西脇が情報番組を担当していた時代も、コメンテーターには、テレビの中でどういう存在感を示してくれるのか、どのように映り、どう音として聞こえるのか、どういう空気を作ってくれるかが重要だったという。
「その場が『もっともなことを言ってくれた』という気分になるコメントを返してもらえるか、番組の登場人物としてどう振る舞ってくれるか。いい雰囲気、いい語り口、人気も意外とあるらしいとなると、中身うんぬんよりも記号や偶像としてのその人がテレビの中にハマって重用されると感じていました。
雰囲気優先でも、タレントさんとして人気が出るだけなら問題はないかもしれません。でもそこに政治的な権威づけがされると、影響力を持ち、世の中全体を左右するようになるかもしれない。その怖さまでは考えていなかったのではないか。ですから、作り手として大事になってくるのは、本当にそれで良かったのか、伝えた中身は結局何だったのか、番組を作っていく中でそれにどこまで向き合えていたのか、という反省だと思います」
西脇が三浦氏を提訴した後こそが、むしろ官民で三浦瑠麗という女性の登用が加速した時期だった。「テレビのレギュラーやCM、省庁の委員会など、矢継ぎ早に決まって、分かりやすく重用されて。時の政権の人と懇意で、保守的な考え方も同じで学者を名乗り、しかもその分野には珍しく女性であるというのは、あの当時の男女共同参画を促していく時勢には好都合だったのでしょう。いわば女性枠で権力の側に近づき、引き上げられていく。ポジションの取り方や時流の見極めなどがとてもうまい方。けれど今、そうやって得た権力の使い道が正しかったのかが問われていると思います」
第一審で「名誉毀損には当たらない」が「ツイートはプライバシー侵害に当たる」として30万円の損害賠償が認められ、西脇は勝訴した。だが三浦氏は控訴。闘いは第一審から控訴審を経て、最高裁での上告棄却によって西脇の勝訴が確定するまで続いた。