テレビの人気“国際政治学者”の発言は
文字に書き起こしてみると論理関係があやふやになる

 2023年3月22日、最高裁の決定により勝訴。西脇は、1345日間を費やした彼の壮絶な闘いを物理的に象徴するかのように積み上げた訴訟資料の山を前に、穏やかに語った。「私が裁判所に駆け込んだのは、あの場所ならフェアだから、何が事実かどうかだけで闘えるんじゃないかと思ったからです」。訴訟は、圧倒的なフォロワー数を持つ者による一方的なTwitter攻撃という“血まみれの経験”をした西脇が、絶命せず生きるための行動だったのだという。

 訴訟のために、西脇は三浦瑠麗氏という“国際政治学者”が行ってきたテレビでの発言を文字に書き起こし、原告準備書面とする作業を行った。それに先んじて、三浦氏は元大阪府知事・市長の橋下徹氏が代表を務める橋下綜合法律事務所とのタッグで提出した被告準備書面で、自らのツイートの「社会的意義」を論じていた。

 だが、西脇にはそれらを文章で読みながら気づいたことがあった。三浦氏の主張は、文章にした途端に前後の論理関係のあやふやさが露呈するのだ。被告準備書面での三浦氏の流れるような長文に及ぶ主張も「前提が間違っていたり、よく考えてみると裁判とは関係ないという内容が多かった。読めば読むほど、私の頭は混乱の渦に突き落とされていった。」「その内容の多くは(中略)この裁判のポイントから外れていると感じた。これは一体、どこから手をつけて反論していけばいいのか。」(『孤闘』より)

 西脇は指摘する。

「私もメディアに長らくいますので、テレビという世界は、論理的というよりも、感情に響くか、どういう印象を与えるかが優先されるという認識はありました。でも実際に裁判をやってみて、テレビの番組で三浦さんが発言したことを文字に書き起こしたら、中身に筋が通っていないことが、よりはっきりと分かってくる。テレビやメディアの中での三浦瑠麗さんが浮き彫りになったんですね」

 長い話を聞いているときはもっともらしく聞こえるが、文字にすると雰囲気優先のスピーチであることが分かる。なんなら一切関係のない話ですらあるのに、放送の空気ではなぜか「いい話聞いたな」という気持ちにさせられる。西脇は微かに天を仰ぐようにして言った。「いざ向き合ってみて初めて、あっ、こういうことだったのか……と、理解できたんです」。