超ミニマル・ライフとは、「どうでもいいことに注ぐ労力・お金・時間を最小化して、あなたの可能性を最大化する」ための合理的な人生戦略のこと。四角大輔さんの新刊『超ミニマル・ライフ』では、「Live Small, Dream Big──贅沢やムダを省いて超効率化して得る、時間・エネルギー・資金を人生の夢に投資する」ための全技法が書かれてあります。本書より、【有酸素運動と瞑想効果】同時に得られる理想的な走り方についてご紹介します。
監修:湯本優/株式会社cart CEO、医師、医学博士
瞑想は、メンタルを整える
近年、欧米の大学や研究機関で瞑想の科学的なリサーチが進み、脳機能を高める複合的な効果が報告・示唆されている。次にリストアップしたものはその一部にすぎない(※1)。
・脳疲労の原因を抑える効果が高い
・疲れづらい脳になる
・ストレスに強い脳になる
・記憶力が高まる
・感情調整力の向上
・自己コントロール力の向上
・集中力の向上
さらに瞑想は、メンタルを整えることもわかっている。そして、前回の連載で紹介した動的瞑想は運動でもあるから、次から述べていく「運動による効能」も同時に得ることができる。
ゆるい有酸素運動の利点
しかし、疲弊するほど激しい運動をしてしまうと「交換神経」が過度に優位となり、瞑想効果を得られなくなる。
激しい運動は、体内の活性酸素が急増して細胞や遺伝子を損傷したり(※2)、免疫力低下(※3)、脳の血流が減る(※4)などいいことがない。長距離マラソンやトライアスロンといった過酷な有酸素運動は、脳と体の老化を進めることもわかっている(※5)。
あくまで、苦しすぎない中強度の有酸素運動を心がけよう。これこそが──三日坊主に終わらず──エクササイズを習慣化して効果を最大化するためのコツでもあるのだ。
スロートレーニングを習慣にできれば、脳疲労は減る上に、精神的ストレスは軽減して、基礎体力と持久力は向上して心肺機能と免疫力は高まり、末端の毛細血管は増え、自律神経のバランスが整っていく(※4)。
さらに、運動のたびに血流量が増大して全身に行き渡って、疲労物質と老廃物が取り除かれる。体温上昇と発汗によって細胞や肌の代謝が促進され、毒素や化学物質が効率的に排出されるなど、その効能は枚挙にいとまがない。
さらに劇的な効能がある。運動がメンタルヘルスを改善することに加え(※6)、「副作用のない抗うつ剤」と呼ばれるほど、うつの予防や治療に優れた効果を発揮するというのだ(※4)。
つまり、「動的瞑想スロートレーニング」を継続するだけで「脳・神経・内臓・筋肉」の機能──あなたのオーガニックデバイスの性能──はどんどん高まっていくことになる。
そしてそもそも──運動不足は「死ぬ」原因になる──これは、膨大な数の最新エビデンスを元に構成された『健康になる技術大全』(ダイヤモンド社)の著者で公衆衛生学者の林英恵さんの言葉だ。
この本によると、運動不足は日本人の死亡原因4位で、世界の死亡の9%は体を動かすことで解消でき、運動習慣があれば死亡リスクが何と約2~4割も低くなるという。
短い距離を長い時間かけてゆっくり走る
ここで紹介するのは、歩くくらいのスピードで走る超スロージョグだ。これも理想的な「ゆるい有酸素運動」であり「動的メディテーション」だ。ただ歩くよりも心拍数が上がる中強度のトレーニングとなるので、より多くの運動効果を得られる。
体力に自信がない人は、まず前メソッドの低強度のゆるいヨガから始めるといい。一定期間を経て、体が運動に慣れてきたら超スロージョグに移行しよう。
4つのポイントを押さえつつ説明していきたい。
【超スロージョグ20~45分】鍛える場所:下半身の筋肉と全身のインナーマッスル
①足だけで走ろうとせず全身運動を心がけよう
一歩一歩は小幅でいいので、太ももを上げるよう意識し、両腕は肩甲骨から大きく振ること。全身で気持ちよさを感じながら走ることがポイント。走る前後に必ず軽くストレッチして筋肉をほぐすこと
②走りながらも、深い鼻呼吸を続ける
通常のランニングだと、苦しくてつい「口呼吸」になるが、この走法は違う。走りながら人と会話できるほどのスローペースなので、常に深い鼻呼吸ができる
③フローとリズムを意識する
手足の動作がぎくしゃくしないよう、全身をリズミカルにスムーズに動かそう。信号で立ち止まったり、苦しくなった時に歩くとフローが途切れてしまう。その時は、その場で足踏みするか、さらに小股にしてペースダウンするといい
④自然を感じ、意識を内へ
五感を通して風景や環境音、またはお好みの音楽を聴きながら、自分の内側に意識を向けて走ろう。そうやって、心を鎮めつつ呼吸にフォーカスして超スロージョグを続けると、不思議なくらい気持ち良くなっていく
途切れないリズミカルな動作が続くスロージョグは瞑想状態に入りやすく、「動的メディテーション」の理想系だ。
スロージョグによる複合的な効能
無理せず楽なペースを保つことで、関節や筋肉を痛めるリスクを低減できるから、体力に自信がない人でも走り続けることができる。
走るのが苦手という方はウォーキングから始めてもOK。その際は、通常の歩行よりもエネルギー消費率(代謝率と体脂肪の燃焼率)が高い「早歩き」を心がけよう(※5)。
ちなみに、スロージョグのエネルギー消費率は、歩くよりもだんぜん高いが、速く走るのと同じという(※7)。そして、歩くより走る方が、脳が「ドーパミン」を分泌して気分と集中力を向上させ、運動後も高い状態を維持するという(※8)。
だから、とにかく焦らずゆっくり走ろう。
なお、体脂肪の燃焼とドーパミン効果を考えた場合、最低20分は走った方がいいが、理想は30分以上というのが最新のスポーツ科学の見解である。
さらに、脳の老化防止にもなるというから素晴らしい。運動によって、脳の古い細胞が遺伝子レベルで若返り、加齢による脳の萎縮の進行が食い止められるからだという(※4)。
この若返り効果を得るためには、心拍数をある程度上げる必要(=中強度)があるが、やはりハードな運動は不要だ。60人の成人グループが「週3回40分間の早歩き」を1年続けた結果──記憶や感情コントロールを司る重要な脳の部位──「海馬」が2%大きくなったというのだ(※4)。「海馬」は25歳を境に年に約1%縮み続けるというから、この調査結果は劇的である。
著名な精神科医・樺沢紫苑先生によると「多少息が上がるくらいの有酸素運動を30分以上続けると脳内でエンドルフィンが分泌される(※8)」という。しかも、走り終えた後にもエンドルフィンが出続ける(※4)。運動で得られるあの爽快感、言葉にならないリフレッシュ感はここからくるのだろう。
エンドルフィンは、別名「脳内モルヒネ」と呼ばれるほど高い高揚感と、多幸感をもたらすホルモン(神経伝達物質)のこと。
大げさでなく、運動は人生の幸福度の鍵を握るのだ。
『運動脳』(サンマーク出版)著者の精神科医アンデシュ・ハンセンいわく、脳を最高のコンディションに保つためには、筋トレよりも有酸素運動の方が効果的で理想は45分以上のランニング(週3回以上)を習慣にすることだという。
さらにこう続ける。「半年ほど続ければ、目覚ましい変化を実感することだろう」と。
(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)
【参考文献】
※1 久賀谷亮『世界のエリートがやっている 最高の休息法』ダイヤモンド社(2016)
※2 オムロン「活性酸素を減らす生活術」(2003)
※3 日本経済新聞「運動もハード過ぎると免疫機能低下 コロナ感染に注意」(2021)
※4 アンデシュ・ハンセン『運動脳』サンマーク出版(2022)
※5 デイブ・アスプリー『シリコンバレー式超ライフハック』ダイヤモンド社(2020)
※6 小田切優子「運動・身体活動とストレス・メンタルヘルス」日本公衆衛生雑誌 57(1), 50-54, 2010-01-15、「運動によるストレス・心疾患に及ぼす効果をとりまとめて報告」栄養スポーツWeb(2019年10月1日)
※7 田中宏暁「本当に痩せたいなら『速く』走ってはいけない」東洋経済オンライン(2017年2月26日)
※8 樺沢紫苑『精神科医が見つけた 3つの幸福 最新科学から最高の人生をつくる方法』飛鳥新社(2021)