本日のテーマは、「アポをより正確に取捨選択するためのフローと、ミーティングや打ち合わせを軽くする交渉術」です。
超ミニマル・ライフとは、「どうでもいいことに注ぐ労力・お金・時間を最小化して、あなたの可能性を最大化する」ための合理的な人生戦略のこと。四角大輔さんの新刊『超ミニマル・ライフ』では、「Live Small, Dream Big──贅沢やムダを省いて超効率化して得る、時間・エネルギー・資金を人生の夢に投資する」ための全技法が書かれてあります。本書より、最軽量の“コミュニケーション手段”についてご紹介します。

「最大の時間泥棒=人間関係」を軽くするたった一つの考え方<br />Photo: Adobe Stock

他人との時間を最小化することで──大切な人、子どもや家族とのんびり過ごす時間を最大化するため

 コロナ禍を受けてミーティングのオンライン化が劇的に進み、人類のコミュニケーションに革命が起きた。

「在宅×リモート」のハイブリッドワークを15年近く実践してきた筆者にとっても──そして人間関係の軽量化においても──歓迎すべきパラダイムシフトである。

 だからこそ多くの人が気付いたはず。相手の体温を感じながら同じ空間で会える喜びに。

 ここまでの連載で、人からのオファーを断る方法を説いてきたが、「そこまでやる?」と思われた方もいただろう。

 それは──他人との時間を最小化することで──大切な人、子どもや家族とのんびり過ごす時間を最大化するためである。こういった目的や議題のない非生産的な時間こそが、人生を豊かにすることを忘れないでほしい。

 ここでは、アポをより正確に取捨選択するためのフローと、オンライン化という潮流を利用して、ミーティングや打ち合わせを軽くする交渉術を解説したい。

アポの取捨選択フロー

「会いたいから時間がほしい」と打診を受けた時、以下「1」~「4」のフローに従い、受けるべきかどうか、受けるにしてもリアルな対面にすべきかどうかを冷静に判断しよう。

1、「議題」の確認
 最初に訊ねるべきだがやらない人が多い。

「議題を教えてください」と単刀直入に聞きづらい時は、「話して決めるべき重要なポイントは何になりますか?」というように表現を崩すといい。ここでもやはりメールだとやりやすい。口頭でアポの相談を受けた時でも「まずは議題をメールでいただけますか」と、やりとりをメールへシフトさせよう。

 必要性のある議題が提案された場合は「2」へ。あやふやな回答しか得られない場合は、お断りのフロー「4」に移行する。

2、「リアルな対面で行うかどうか」の判断
 提案された議題から、「リアルな対面」で奪われる次の労力と時間のコスト──「A:お互いの予定を合わせる」「B:ミーティング場所を押さえる」「C:物理的に移動して行う」──に見合うかどうかジャッジしよう。

 言うまでもなく「対面→オンラインミーティング→電話」の順に手間と時間のコストは下がっていく。

3、「A:お互いの予定を合わせる」のみが該当する場合
 コスパが悪い「リアルな対面」は迷わず避けよう。最もコスパがいい「電話打ち合わせ」をまず検討し、顔を見ながらの方が効率的な議題の場合はオンラインミーティングを提案しよう。

4、「A」「B」「C」どれにも該当しない場合
 前回の連載でご紹介した、メールの「お断り定型文」を活用して丁重にお断りしよう。

未来を軽くしておくべき理由

 動かせない予定が先々まで埋まっていると、行動の自由度も、スケジュールの流動性も下がってしまう。

 これほど非連続な社会となってしまった今、大きなチャンスほど予期せず突然やってくる。固定化されたスケジュールは、それを逃すリスクを高めてしまうことになる。「確固たるプランを構築して先々まで予定を立てる」という手法は時代遅れであると、改めて心に刻んでほしい。

 だからこそ、強力な「縛り」が生じる「対面で会う約束」は減らした方がいい。もちろん「電話」や「オンラインミーティング」も、むやみに入れるべきでないが──万が一の時に──これらの方がリスケの相談がしやすい。

 なぜなら、もとより「B:ミーティング場所を押さえる」手間と「C:物理的に移動して行う」時間の確保といったコストがかかっておらず、変更を強いるのは「A:お互いの予定を合わせる」だけになるからだ。

 ただし、電話やオンライン、対面に限らず、参加人数はいつでも最小限にすべく努めた方がいい。相手が少なければ少ないほどスケジュール再調整にそれほど苦労しないからだ。

 理想は、お互いが決定権を委任された状態で「最小単位の2人」で行う形だ。相手が1人の場合と2人の場合、わずか1人増だが、リスケには数倍の労力を要する。だから筆者は、常に「2人だけ」にもっていくべく画策する。

 では、相手が3人、4人だとどうなるか。

 たとえオンラインだとしても、それは「回避が難しい予定」──つまり未来の大きな制約──となって多くの可能性を奪い去る。参加人数に関してもミニマルを徹底する癖を身に付けよう。

 だが逆に、大人数の会議は抜けやすい。会議の主催者でない限り、あなたがいなくても会議は回るからだ。

 しかも、無駄な会議の損失額「年間15億円」という試算もあるほど、世界から見て日本は会議が異常なくらい多い(※1)。著名な独立研究者で経営コンサルタントの山口周氏いわく、優秀な人ほど会議をうまく回避するという。

アポ軽量化のためティップス集

 そして、アポを確定する際には必ず、「ミーティングの終わりの時間」を決めること。

 さらに、前著『超ミニマル主義』で伝授したように、15分単位で刻むことも忘れないように。1時間想定であれば「45分あれば大丈夫ですよね?」と提案することで、お互いの集中力を高めて効果を最大化できるからだ。

 なお、なかなか捕まらない多忙なキーパーソンとの「確実なアポ」を取りたい場合は、メールではなく、電話や対面でアポを打診すべきだ。筆者は、予定を全く押さえられない社内外の超重要人物には、時に「アポを取るためのアポなし訪問」という実力行使に出ていた。

 当人がエレベーターに乗った瞬間「15分でいいので、いつでもいいので時間ください」と直訴したり、秘書の方に深々と頭を下げて同様の言葉を伝えていた。

 相手も血の通った人間、こちらの真剣な声や面持ちに触れてしまうと「なんとかしよう」と思うもの。こう考えると改めて、「相手から対面、または肉声でお願いされる状況」はできる限り避けたいと誰もが思うだろう。

 コミュニケーションのオンライン化が進んだことはいい面ばかりではない。そのせいでコロナ禍前よりも、安易にミーティングを入れる人が増えてしまったからだ。

 さらに、オンラインミーティングでは移動時間が不要なため、前後の余白時間なしで予定を入れてしまい、よりストレスを感じる人が増えているという。

 繰り返すが、「スケジュール的にいける」という理由だけで安易に予定を埋めてはいけない。タイムマネジメントとは、自分の首を絞めるための技術じゃない──あくまで、あなたを楽にするためのもの──言うまでもないだろう。

 ご時世か、「好きに、のんびり生きようよ」という類の言葉が飛び交うようになった。もちろん、そう生きられたら最高だ。しかし、そのための時間を生み出すための技術論抜きに、ただそう唱えたところで理想は理想、夢は夢、で終わる。

 なぜなら現代は、あなたの時間を奪う要素が無数に存在するからだ。スマホや過剰な情報、メンタルや体の不調、そして仕事……と挙げ始めたらキリがない。

 だが何よりも、人間関係こそが最大の時間泥棒である。

 だからこそこの難題と心して向き合ってほしい。この連載では、引き続き、その解決策を伝えていこう。

(本記事は、『超ミニマル・ライフ』より、一部を抜粋・編集したものです)

【参考文献】※1 日本経済新聞「ムダな会議、年15億円の損失 大企業ほど時間多く」(2018年9月6日)