「マネージャー」と「マネジャー」、「マネージメント」と「マネジメント」。それぞれどのように使い分けるか、説明できますか?
国立国語研究所の教授が「雑な文章」を「ていねいな文章」へ書き換える方法をbefore→after形式で教える新刊『ていねいな文章大全』から、外来語の長音「ー」の使い分けについて紹介します。(構成・撮影/編集部・今野良介)
「ー」を付けるか付けないか問題
英語のつづりで語末に「er」や「or」が付くもの、たとえば、
・センター(center)
・タイマー(timer)
・ディレクター(director)
・フレーバー(flavor)
・マイナー(minor)
などは、長音記号「ー」が語末に付くのが原則です。
しかし、すべての語に「ー」が付くわけではありません。下記などがその例です。
・プロペラ(propeller)
・リニア(linear)
・アウトドア(outdoor)
・ジュニア(junior)
・ドア(door)
何が違うかと言われると、じつのところ「多くの人がこのように使っている」という慣用によるとしか言いようがありません。例外として覚えておくことになるでしょう。
さて、次の例を見て、違和感を覚えるところがありますか。
・トラック運転手など、ドライバの求人に特化したサイトが人気を集めている。
・ファッション雑誌の読者モニタ募集に応募してみた。
「ドライバ」「モニタ」でも誤りではないのですが、コンピュータ用語に見えてしまうため、「ドライバー」「モニター」と書かれるのが一般的です。
人間を指し示す場合、長音「ー」が使われることが多いようです。
・トラック運転手など、ドライバーの求人に特化したサイトが人気を集めている。
・ファッション雑誌の読者モニター募集に応募してみた。
一方で、人間ではなく、ものにたいして使う場合「ー」が削られる傾向があり、上述のようにコンピュータ関連の用語で顕著です。
「エディタ」「サーバ」「フォルダ」「ブラウザ」「ルータ」などがそれに当てはまります。
長音の問題は語末以外でも起こります。たとえば「マネージャー」と「マネジャー」。
「マネージャー」は体育会系のクラブで練習や試合の環境を整えるサポートをする人のイメージがあり、「マネジャー」は企業において高度な経営・管理活動に携わっているイメージがあります。
つまり、長音がないほうがより専門性が高いイメージがあり、「マネージメント」と「マネジメント」においても後者のほうが専門用語らしくなります。
拙著『ていねいな文章大全』では、このほか「テークアウト」と「テイクアウト」などにみられる「ー」と「イ」の使い分けによる印象の変化など、細かい文法レベルから長文の構成まで、文章表現の指針を多数紹介しています。