人・組織のマネジメントには、部下の管理やリーダーシップなどを扱う組織行動学(OB)と、人員配置や評価制度などを扱う人的資源管理(HRM)という2つの領域がある。いずれも「人の行動メカニズム」に基づいている。両者の具体的な施策間で整合性を図ることが重要だ。
組織行動学と人的資源管理
人・組織のマネジメントは、「組織行動学」(OB:Organizational Behavior)と「人的資源管理」(HRM:Human Resource Management)に分けて考えることができる。本書では、OBを「人や組織に影響を与える“個人の取り組み”」、HRMを「人や組織を動かしていくための“企業の仕組み”」ととらえることにする。
OBとHRMは、社会学や心理学などから導き出された「人の行動メカニズム」(組織において人はどのように行動するかという基本原理)に基づいている。両者の違いは、人や組織に働きかける際に用いる方法にある。人の行動メカニズムを考慮しながら、OBではマネジャーなどの「個人の取り組み」によって、HRMでは評価制度などの「仕組み」をつくることによって、組織や人に働きかける。
企業はOBの考え方とHRMの考え方とを組み合わせて人・組織のマネジメントを行うが、そのときに重要なのは、OBの個別の行動とHRMの具体的な仕組みとの間で整合性がとれていることだ。これらの間で矛盾があると、従業員は戦略目標を見失ってしまい、戦略が実現されないこともある。
これまで、人・組織のマネジメント(とくにHRM)は人事部門の専管事項と見なされることが多かった。しかし、企業の競争優位の源泉となる「ヒト」と、ヒトの持つ「知識」や「知恵」の重要性が増している今日、人事以外の機能を担う部門のマネジャーもOBとHRMを理解する必要がある。
組織行動学の視点
OBでは次の2つの側面について考える必要がある。
■個人、集団、組織:人の行動は、「個人」か、「集団」(目的を持った個人の集合)か、「組織」(目的を持った集団の集合)かによって異なってくる。たとえば、意思決定をする場合、要する時間やコンフリクトの多寡などに違いが生じる。そのため、それぞれの特徴を理解しておくことが、マネジメントを行ううえでは重要になる。