李克強前首相と習近平総書記李克強前首相(右)と習近平総書記(左) Photo:Feng Li/gettyimages

李克強前首相が上海で急死
原因は心臓発作と発表

「李克強同志逝世」

 10月27日午前、国営新華社通信など中国の関係メディアによって配信されたこの中国語による7文字を前に、我が目を疑った。同メディアによれば、上海で休養中だった李克強前首相(以下敬称略)は27日未明、心臓発作に見舞われ、医師たちによる全力の救助も功を奏せず、そのまま亡くなったという。68歳だった。

 李克強は1955年7月生まれで、習近平総書記(以下敬称略)より2歳若い。昨秋から今春にかけて、15年間務めた中央政治局常務委員、10年務めた首相の座から退き、政界を完全引退していた。

 未練がましい様子を見せることなく、一切の公職から退いたその姿は、李克強にとっては共産主義青年団時代からの先輩である胡錦涛前総書記の「裸退」を想起させる。2012年秋から13年春にかけて、胡錦涛は、前任の江沢民とは異なり、中央委員会総書記、国家主席、中央軍事委員会主席という全ての職を辞した。そして、院政を敷くこともなく、引退した長老が現役の後輩たちの政治に干渉・介入する悪習を、自らの行動で排した。

 今年3月5日、李克強は首相最後の仕事として、全国人民代表大会初日の「政府活動報告」を読み上げた。最後の最後まで、真面目に、低姿勢で任務を務め上げていた。

 過去にはその顔色、仕草、声から体の具合が悪いのではないかと感じさせる場面もあったが、今年の李克強はいつになく精悍(せいかん)な表情をしていた。最後の任務を全うすべく、コンディションをその日に合わせてきたのだろう。同日、李克強は苦楽を共にしてきた国務院のスタッフたちに見送られ、最後のあいさつをした。

「人の行いを、天は見ている」

 こんな言葉を残しつつ、政治家・李克強の現役生活は幕を閉じた。