ウォーキングは体にいい。それはたしかに事実です。でも実は「ただ歩くだけ」では効果が出にくいことをご存じでしょうか。同じ歩くなら「科学的な歩き方」で「最大効果」を手に入れる。ここを目指したいものです。そこで本連載では論文マニアとしても有名な大谷義夫先生(医師)が、82の論文、世界の最新エビデンスをもとに正しく効果的な歩き方を書いた本『1日1万歩を続けなさい』から、今日から役立つ「歩き方のコツ」をお伝えします。
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なぜ人は太るのか?
通常、食事をすれば血糖値はゆっくり上がりゆっくり下がるものですが、甘いものや食事を一度に食べすぎると、血糖値は急激に上がります。
すると体はその急上昇を抑えるために、すい臓が大量のインスリンを出し、これを一気に下げにかかります。しかし実はこのインスリン、血中の糖分を脂肪に換えて体に溜め込む働きももっているため、過剰に分泌されると脂肪を溜め込みやすく、太りやすい体をつくります。
これが私たちが「太る理由」のひとつです。
食後の急激な眠気やだるさは危険
食後に血糖値が急激に上がり急激に下がる状態を「血糖値スパイク」と言いますが、この状態に陥りがちな人は空腹時の検査では正常な人が多いことから「隠れ糖尿病」と言われています。
血糖値スパイクを起こすと、体は一気にインスリンを出しますが、この働きが弱いと食後2時間経っても血糖値が下がらなかったり、逆に過剰に出すぎると急激な眠気やだるさ・頭痛の他、イライラや吐き気をもよおすこともあります。
ですからこれらの意味からも食後きちんと血糖値を下げることは非常に大事になってきます。
ドイツ体育大学の実験
そこでご紹介したいのが、ドイツ体育大学の実験です。
ドイツ体育大学では、ドーナツを食べた学生を「食後すぐ歩くグループ」と「じっとしているグループ」に分け、その血糖値を比較しました。
この実験によると、カロリーの高いドーナツは、食後に血糖値の急上昇を招いたものの、すぐに歩いたグループの血糖値は、じっとしていたグループに比べて早く下がることがわかりました。
血糖値はできるだけ早く下げる
そこでみなさんにご提案したいのは、食べたらすぐに歩いて余分な糖はさっさと使い、血糖値をできるだけ早く下げてほしいということです。
先日あるテレビ番組が密着取材で我が家にこられ、私が毎日、東武デパートに行って家族のためにケーキを買う様子を取材していかれたのですが、「毎日ケーキを食べて大丈夫ですか?」という質問に、私は「食べたらすぐに歩く」を強調させていただきました。
ウォーキングは「食前」「食後」どちらが有効?
血糖値を安定させるには「食前」と「食後」どちらのウォーキングが有効かといえば、先の実験結果の通り食後のウォーキングがおすすめです。
ちなみに「食前」のウォーキングには、脱水に陥るリスクがあるというデメリットもありますのでご注意ください。
私たち人間は1日の必要水分量のうちのかなりの部分を食事からとっています。
ですから食事前のウォーキングで汗を大量にかいてしまうと、脱水に陥るリスクが高まるのです。
その意味からもウォーキングは「食前」「食後」どちらにするかを迷ったら「食後」にするのがおすすめです。
※本稿は大谷義夫著『1日1万歩を続けなさい』より、一部を抜粋・編集したものです。本書は他にもウォーキングにまつわるさまざまなエビデンスと、具体的かつ効果的な歩き方が紹介されています。