このパーティーへの誘いに、アダムはとんでもなく頭を悩ませました。近所の人に、車が家にあるのを見られたら、拒絶したと勘違いされたり、あれこれ非難されたり、独りが好きな変人だと思われたりするのではないかと不安になったのです。

 不安を解消するために、アダムは結局、もともとの計画を放り出して遠くのスポーツバーへ行き、興味のないスーパーボウルの試合を観戦したのでした。

 念のため言っておきますが、アダムが決して臆病者というわけではありません。彼は法曹界で高いキャリアを積んでおり、世間の注目を集める重要な裁判にも何度も携わっています。

 しかし、この誘いを受けたときばかりは、彼の深層心理に感情が支配されてしまいました。その結果、近所の人に変な目で見られるのが怖くて、本当の自分をさらけ出せなかったのです。

本当の自分で生きたら
どんな人生を送れる?

 虐待を経験したサバイバーたちは常に、相手の求める行動をしなかったら相手に嫌われる、という考えに取りつかれています。

 あなたにも覚えがあるのではないでしょうか?

 常に人を喜ばせようと気を遣い、理想の自分でいようとするのは精神的エネルギーを大幅に消耗します。そうしたからといって必ずしも相手を喜ばせられる保証はないのですから、なおさらです。

 心は疲弊するでしょう。恐怖を捨て去って、素の自分でいたいと思った瞬間もあるかもしれません。

 自分が本当はどんな人間なのか、考えてみましょう。

 また、本当の自分をさらけ出して素直に生きたら、どんな人間関係を築き、どんな人生を送れるか想像してみましょう。

シェリー・キャンベル(Sherrie Campbell, PhD)
毒家族に苦しむ人々を救う心理学者であり、家族との絶縁を手伝う専門家として全米で知られている。かつてBBM Global NetworkとTuneIn Radioで自身のラジオ番組「Dr. Sherrie Show」を主宰していた。講演者、SNSのインフルエンサーとしても知られ、メディアにも頻繁に取り上げられている。著書に『幸せになるには親を捨てるしかなかった』(ダイヤモンド社)などがある。

※本稿は、シェリー・キャンベル著 髙瀨みどり訳『幸せになるには親を捨てるしかなかった』(ダイヤモンド社)から再構成したものです。