かつて企業の“広報”は組織内でもマイナーな部署だった。しかし、この10年ほどで状況は変化し、スタートアップ企業や中小企業がこぞって広報活動に尽力するようになっている。長年広報という仕事に携わり、時代の転換期を支えてきた「広報勉強会@イフラボ」主催の長沼史宏氏が、広報活動の評価方法やSNSの活用術について解説する。本稿は、長沼史宏『先読み広報術 1500人が学んだPRメソッド』(宣伝会議)の一部を抜粋・編集したものです。
広報活動の評価は
準備・実施・効果の3階層で行う
メディアに話題を提案し報道につなげる――。このことは広報活動のゴールのひとつですが、最終的な目的はもう少し先にあります。プレスリリースや話題の提案を通じてうまく報道につながったのであれば、その露出によって高められた注目度に応じた刈り取り施策も必要です。
広報担当にとっての最初のゴールは、自分たちの活動や商品を不特定多数の人が目にするテレビ・新聞・雑誌などのマスメディアで、ポジティブな論調で報道してもらうことです。そして、報道による効果を最大化する活動と露出効果を的確に捕捉することにも注力し、全体の評価を行うまでが一連の広報活動となります。広報活動の著名な評価モデルを用いながら具体的に解説していきます。
図1は、スコット・M・カトリップらが『体系パブリック・リレーションズ』で紹介している評価のレベルです。ここでは広報活動を評価する際に、大きく(1)準備、(2)実施、(3)効果、という3つの階層で評価します。
準備(1)……話題の発信に向けた準備のプロセス評価
・質の高い話題づくり(情報クリエイティブ)ができ、的確な発表資料がつくれたか
・その企業・団体が取り組む必然性は担保されているか(経営ビジョンなどとの関連性)
・メディアインサイトに響く文脈形成ができていたか(旬に絡んだ、いまである必然性)
実施(2)……発信した話題のリーチ数&共感の度合いに関する評価
・メディアへのリーチ数は必要数に達していたか
・十分な報道件数が獲得できたか
・発信件数は十分であったか(企画した話題の件数、リリース件数など)
・より多くのターゲットにリーチするための工夫ができたか
→広報活動によって新たなタッチポイントが十分につくれたか
(1)と(2)の活動がしっかりしていれば、ポジティブな論調で社会や業界にインパクトを与えるような報道につながり、相応数のメディアや未接触だったターゲットへのメッセージ訴求が可能となります。
(なお、「より多くのターゲットにリーチするための工夫ができたか」は、SNSやオウンドメディアを活用した活動となりますので、以降で紹介していきます)